天皇の生前退位の検討は、昨年8月8日に公開された天皇の「おことば」と呼ばれるビデオメッセージを受けてのものですが、その公開の前に、官邸が安倍首相のお友達、日本会議系学者・八木秀次氏にその内容を漏洩し、カウンター的な動きを依頼していたということが指摘されています。
官邸が自ら天皇の「おことば」を事前に漏洩するなんていうことがありうるのか――事実なら、国家公務員の守秘義務違反の可能性も。この件を暴露した2017年1月28日配信「本と雑誌のニュースサイト リテラ」から記事を転載させていただき、紹介することにします。(サイト管理者)
※以下、転載はじめ↓
<安倍首相が“天皇のおことば”を日本会議系御用学者に事前漏洩していた!生前退位めぐり天皇への反撃を依頼か>
今国会でも焦点となっている天皇の生前退位問題。国民の大多数が皇室典改正を含む恒久的法制化を支持しているが、安倍政権はあくまで今上天皇の一代限りの特別法での対処で強行するつもりらしい。
そんななか、安倍政権の“逆賊”丸出しの裏工作が明らかになった。生前退位の検討は周知のように、昨年8月8日に公開された天皇の「おことば」と呼ばれるビデオメッセージを受けてのものだが、その公開の前に、官邸が安倍首相とべったりの日本会議系学者に「おことば」の内容を漏洩し、カウンター的な動きを依頼していたというのだ。
その学者というのは、八木秀次氏。安倍政権下で教育再生実行会議委員を務め、首相のブレーン中のブレーンとして知られる日本会議系極右“御用学者”だ。生前退位問題でも、この間、「天皇は在位しているだけで十分」と、今上天皇が「国民の象徴」として考え抜いてきた数々の公務と人権を完全否定して、生前退位に猛反対。もちろん皇室典範改正などもってのほかとの立場で、右派の“退位反対キャンペーン”を牽引してきた。
しかし、だとしても、官邸が自ら天皇の「おことば」を事前に漏洩するなんていうことがありうるのか。事実なら、国家公務員の守秘義務違反の可能性もある。
だが、これはどうも事実らしい。この問題は、(1月)26日の衆院予算委員会で民進党の細野豪志代表代行が質問したのだが、これにはれっきとした証拠があった。ほかでもない八木氏自身が昨年10月18日に発売されたムック「別冊宝島 天皇と皇室典範」(宝島社)のインタビューのなかで得意げに語っていたのだ。
「天皇陛下の『おことば』が発表されたのは8月8日午後3時のことですが、その前の週の夕方、官邸から私のもとに電話が入りました。電話をくれた担当者は安倍総理とも打ち合わせをしたということでしたが、『おことば』の概略や背景事情を知ることができました」
ようするに、これは官邸スタッフがたまたま漏らしたという話ではなく、安倍首相の指示のもと、積極的に八木氏に「おことば」の内容を報告していたということではないか。これは完全に安倍首相の事前漏洩である。
安倍首相の狙いはおそらくこういうことだろう。昨年7月13日のNHKによる「生前退位の意向」のスクープの後、世間ではすぐに高齢となった今上天皇の自発的退位を認める同情的な世論が圧倒した。しかし、安倍政権は天皇の退位によって「万世一系」という明治時代につくられた神話が崩れることを懸念。だが、「保守」を自認する建前上、政権側から天皇に思いっきり矛を向けるわけにはいかない。
そこで、天皇自らの「おことば」が決定的に打ち出されるビデオ公開前に、退位反対派の急先鋒である八木氏にリークして、世論へのカウンターを民間側から打ち出してもらうために情報を流し、今後の政府対応についても八木氏に相談したのだ。
事実、八木氏は産経新聞7月17日付では、「天皇陛下のお気持ちに沿って退位されるということでなければならない。恣意的に退位させられるようなことがあってはいけない」と、捉えようによっては「お気持ち」があれば退位を受け入れるべきとの見解をみせていた。しかし、8月の第1週に官邸からの“リーク”を受け、そしてビデオメッセージ公表直後の同月9日には、同じく産経新聞で、「見直しには相当の時間がかかる上、国論を二分する恐れがある。天皇陛下も国民内で論争が起きるのは望まれないはずだ。そうした点を考慮すると、生前退位の導入には慎重であるべきだ」と一転して、天皇の生前退位の希望を否定にかかった。
そもそも、八木氏は以前から、改憲や教育改悪についても安倍首相に様々な助言をするだけでなく、今上天皇や皇后が憲法や民主主義を守る立場を鮮明にするたびに、まるで安倍首相になり代わったかのようなメッセージを発信してきた。いわばその“反天皇”的態度は右派の言うところの「逆賊」そのものだ。たとえば、2014年には「正論」(産経新聞社)で「憲法巡る両陛下のご発言公表への違和感」なる文章を発表。前年に天皇と皇后が日本国憲法を高く評価したことに対して、こんな猛批判を繰り出している。
〈両陛下のご発言が、安倍内閣が進めようとしている憲法改正への懸念の表明のように国民に受け止められかねない〉
〈宮内庁のマネジメントはどうなっているのか〉
さらに、このとき続けて、〈仄聞するところによれば、両陛下は安倍内閣や自民党の憲法に関する見解を誤解されているという〉なる信ぴょう性皆無の流言飛語を拡散しにかかっていたが、その「仄聞するところ」というのもまた、安倍官邸が情報源であった可能性が高い。
ようするに、八木氏は天皇を黙らせたくてしようがない安倍首相の意志の“代弁者”的な役割を担ってきたのだ。そして、今回も安倍首相はその武器を使って、天皇への反撃を仕掛けたということだろう。
26日の衆院予算委では、細野代表代行から“八木が生前退位について相当の影響力を及ぼしたのではないか”と質された安倍首相は、「承知していない」と煙にまいたが、これに対し、細野代表代行は「これは極めて重要なプロセスの問題ですので、八木秀次氏を予算員会の参考人としてきちんとでてきていただき、ご説明願いたい」と八木氏の参考人招致を求めた。
当然だろう。仮に、政権が国会を経ぬまま八木氏を直接的な“退位反対のメッセンジャー”として国民のあずかり知らぬところで仕込んでいたのであれば、これは、憲法第1条のいう天皇の地位は《主権の存する日本国民の総意に基く》という規定からの逸脱にあたる重大問題だ。ブログでこの件に触れたマンガ家の小林よしのり氏は「官邸は八木秀次に洗脳されている可能性が高い」と怒りをあらわにしているが、それも決して大げさな話ではないだろう。
ところが、国会でも追及されたこの安倍官邸による八木氏へのリーク問題について、テレビなどの大マスコミはまったく報じる気配がない。いまや、安倍首相と極右勢力は、マスコミにとって天皇以上のタブーになっているということなのだろう。
【出典】2017年1月28日配信「本と雑誌のニュースサイト リテラ」
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