「読売新聞」は、2010年2月19日付け社説で、政府有識者懇談会の初会合に際し、今年末までに改定する防衛大綱に関して、「どう抑止力を強化すべきか議論を」などと注文しました。集団的自衛権にかかわる憲法解釈の見直しを迫り、北朝鮮や中国の脅威をことさら強調して防衛予算の増額を要求し、武器輸出3原則の見直しも求めるといういつもながらの内容ではありますが、警戒が必要です。そこでその内容を転載します。(サイト管理者)
社説■「防衛大綱改定 抑止力強化の議論を深めよ」
日本の安全保障環境は今も、中長期的な将来も楽観できない。それに対応するため、どう抑止力を強化するのか、議論を深めることが肝要だ。
防衛計画の大綱を見直すための政府の有識者懇談会が初会合を開いた。懇談会が夏にまとめる報告書を基に、政府が年末までに防衛大綱を改定する。
鳩山政権は当初、昨年末に改定する予定だった。だが、「拙速を避け、新たな考え方を打ち出す」として、1年先送りした。
重視すべきは、日本を取り巻く安全保障情勢の厳しさだ。
北朝鮮は核実験を2回実施したうえ、弾道ミサイル能力を誇示している。一方で、核問題をめぐる6か国協議は停滞が続く。
中国は、22年連続の国防費の2ケタ増により、海空軍を急速に近代化させている。今のペースで軍備増強が続けば、10年、20年後には、日本周辺の軍事バランスが中国優位に転じる可能性がある。
中国が軍事力を背景に、南シナ海と同様、東シナ海でも海洋権益確保の動きを強める恐れも否定できない。その時、日本はどう対応するのか。
防衛力の整備は一朝一夕にはできない。日米同盟の実効性を高めつつ、自衛隊の装備や部隊編成をより効果的なものにし、抑止力を強固にすることが重要だ。
日米同盟の深化には、ミサイル防衛の拡充や、有事を想定した防衛協力の計画策定、情報協力の強化などが欠かせない。
集団的自衛権の問題も検討すべきだ。政府・民主党は、内閣法制局長官の国会答弁禁止など法制局のあり方を見直そうとしている。法制局が主導した、「保有するが行使できない」という憲法解釈の見直しも議論していいはずだ。
国際平和協力活動に積極的に参加する体制も求められる。
世界とアジアの安定は、貿易立国・日本の安全と繁栄につながる。ハイチでの国連平和維持活動(PKO)には陸上自衛隊を迅速に派遣できたが、より多様な任務に対応できるよう、装備や部隊編成を見直すべきだろう。
近年の防衛予算の減少傾向に、そろそろ歯止めをかける時だ。周辺国が国防費を大幅に伸ばす中、日本だけが逆に減らすことについて、危機感が欠けていないか。
無論、冷戦時代の名残は是正すべきだ。陸自の定員や戦車・火砲は一層の削減の余地がある。非効率な防衛調達の仕組みは大胆に改善しなければならない。武器輸出3原則の見直しも急務である。【出典】2010年2月19日付け「読売新聞」社説
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