昨日に引き続き、2008年11月5日、 参議院外交防衛委員会より参考人招致で発言したペシャワール会現地代表の中村哲氏の発言のつづきを掲載します。(サイト管理者)
さらに、今アフガニスタンの問題がいろいろ言われておりますけれども、この干ばつに加えまして、アフガニスタンをむしばんでおるのが暴力主義であります。これは、アフガン人の暴力であることもありますし、外国軍による暴力のこともある。これがアフガンの治安の悪化の背景を成しておりまして、私どもはこれに対しても心を痛めておる次第であります。今、盛んに報道されておりますけれども、アフガニスタンは現在治安の悪化が、悪くなる一方でありまして、しかもその治安悪化が隣接するパキスタンの北西辺境州まで巻き込んで膨大な数の人々が死んでおるということは皆さん御存じだと思います。先ほど冒頭に述べました干ばつとともに、いわゆる対テロ戦争という名前で行われる外国軍の空爆、これが治安悪化に非常な拍車を掛けておるということは、私は是非伝える義務があるかと思います。一口にいろんな反政府運動だとか武装組織だと言いますけれども、基本的にこのアフガン土着の反抗勢力を見渡してみますと、基本的にアフガンの伝統文化に根差した保守的な国粋主義運動の色彩が非常に濃い。切っても切っても血がにじむように出てくる。決してある特定の、旧タリバン政権の指令一つで動いておるわけではない。いろんな諸党派が乱立しまして、それぞれに外国軍と抵抗している状態。それから、かつてなく欧米諸国に対する憎悪が民衆の間に拡大しているというのは、私たちは水路現場で一般の農民たちと接しておりまして感じる実感であるということは伝えておきたいと思います。もちろん、いろんな反抗勢力の中には、私たちの伊藤君、職員の一人であった伊藤君が犠牲になったように、とんでもない無頼漢もいますけれども、各地域でばらばらにそういった自発的な抵抗運動が行われておる。それだけ根が深いわけでありまして、恐らく2000万人のパシュトゥン民族、農民を抹殺しない限り戦争は終わらないだろうというのは、これは私ではなくて、地元の人々、これは地元のカルザイ政権も含めた人々たちの意見でありまして、しかも、武装勢力といっても、アフガン農村について日本で知っている人は少ないと思われますけれども、兵農未分化、すなわち侍と百姓が未分化な社会でありまして、すべてのアフガンの農村は武装勢力と言えないことはない。その中で混乱状態が何を引き起こすかというのは御想像に任せたいと思います。しかも、アフガン農村では復讐というのは絶対のおきてであります。ちょうど赤穂浪士のようなものなんですね。
私たちはニュースの上で、アメリカ兵が今年は何名殺された、カナダ兵が何名殺されたということはニュースになりますけれども、その背後には、一人の外国兵の死亡に対して、何でもない普通の人が死ぬアフガン人の犠牲というのはその100倍と考えていい。すなわち、外国人の戦死、あるいは犠牲者の百倍の人々が、日々、自爆要員、いわゆるテロリストとして拡大再生産されていく状態にあるということは是非伝えるべきだと私は思います。
アフガニスタンとパキスタンの国境地帯もこの悲劇が及んでおりまして、現在、抵抗勢力が何か危ないとパキスタン側に逃れるということで、パキスタン側、アフガニスタン側両側から挟み打ちのようにして軍事作戦が行われておるようでありますけれども、これがまた、今度は、うそのような話で、パキスタン国境地帯からアフガン側に流れてくるパキスタン難民というのが発生する。こういった事情の中で、私が25年いる中では現在最もアフガニスタンは治安が悪くなっておる状態だと言うことができると思います。
(つづく)
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