とだ九条の会blog

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堤未果さんの著書『ルポ 貧困大国アメリカ』から見えてきたもの(2)

2008年07月31日 | 国際・政治
昨日に引き続き、堤未果さんの著書『ルポ 貧困大国アメリカ』から、アメリカの実相を見ていきたいと思います。(文責:サイト管理者)

「競争によりサービスの質が上がり、国民の生活が今よりももっと便利に豊かになるというイメージ」……かつて「市場原理」の導入によって、未来はバラ色のように描かれました。
そして1990年代の「外注革命」をモデルにして、アメリカ政府は国の付属機関を次々に民営化して行ったと言います。
アメリカの経済学者ミルトン・フリードマンは「国の仕事は郡と警察以外すべて市場に任せるべきだ」とまで提唱したそうですが、これに学んだラムズフェルド元国防長官は、さらに戦争そのものまで「民営化」できないかと考え、イラク戦争を「民営化された戦争」の代表的ケースとして結実させたのです。

『ルポ 貧困大国アメリカ』では、トラック運転手のマイケル・ブラウンの話をルポしています。
高卒のトラック運転手だったマイケルの給料は安く、妻と息子を抱えた生活は苦しかったと言います。そこに病弱な息子の医療費がかさみ、マイケルは消費者金融から借金することに。国民皆保険がなく、貧民層は高額な民間医療保険に加入できるわけでもなく、支払い能力を遙かに超えた医療費の請求がくるというわけです。消費者金融への借金返済のために借り換える内に多重債務者のブラックリストにマイケルの名前が載せられたとき、派遣会社からトラック運転手として高額な給料を保証するという甘い宣伝文句の仕事の電話が舞い込みます。しかし、それは外国、それもイラクの戦場で働く人材を集めるリクルーターからの電話でした。
マイケルが登録した派遣会社は「ケロッグ・ブラウン&ルート社(KBR社)」といい、登録社員数は6万人超、週に平均2~300人をイラクやアフガンに送っている派遣会社です。
「これは戦争ではなく派遣という純粋なビジネスです」というリクルーター。結局、登録2週間後にマイケルが派遣された先はバグダッド。トラック運転手として武器の輸送が仕事でした。10ヵ月が過ぎる頃、マイケルは肺に鋭い痛みを感じます。契約の1年を全うするため、上司には体調が回復したと報告し、なんとか契約期間を終え帰国したマイケルは白血病にかかっていたことを知ります。バクダッドで、米兵たちには安全なペットボトルの水が支給されるのに、マイケルたち民間の契約社員は現地の水を飲まされていました。米兵が使用する劣化ウラン弾の影響で汚染されている水が原因だったのでしょう。結局、イラクでの多額の報酬も医療保険に加入できていなかったマイケルの治療費で消えてしまったそうです。貧困から抜け出たい一心での戦場行き。しかし帰国したマイケル一家の生活は、イラクに行く前よりもひどい状況に陥ってということです。
(つづく)

【出典】『ルポ 貧困大国アメリカ』(堤未果著、岩波新書刊、700円+税)

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堤未果さんの著書『ルポ 貧困大国アメリカ』から見えてきたもの(1)

2008年07月30日 | 国際・政治
堤未果さんといえば、2001年、アメリカの野村証券に勤務中に「9.11同時多発テロ」に遭遇、その瞬間を隣のビルから目撃し、その後、ジャーナリストとなって活躍している方です。現在はニューヨークと東京間を行き来し、アメリカ社会の現実と日本の進路に警鐘を鳴らし続けています。川田龍平参議院議員と結婚したとのニュースも記憶に新しい方です。 その堤未果さんが書いた『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書刊、700円+税)を読みました。

「教育」「いのち」「暮らし」という、国民に責任を負うべき政府の主要業務が「民営化」され、市場の論理で回されるようになった時、果たしてそれは「国家」と呼べるのか?--新自由主義、市場原理主義にもとづいて「教育」「医療」「戦争」まで、極端な「民営化」の果てに、貧困大国と化したアメリカの実態ルポは、政治的にも、経済的にも、そして軍事的にも、アメリカの後を盲目的に追随している日本にとって、決して他人事ではありません。 新自由主義路線は、アメリカでもイギリスでも、そしてアメリカから押しつけられた南米の国々でも、破たんが明らかとなり、世界でこれほどまでに警鐘が鳴らされているのに、なぜ我が日本政府は、このアメリカを後追いするのか……。 『ルポ 貧困大国アメリカ』の中で、堤未果さんは、サブプライムローンに揺れるアメリカの実相として、「食生活」「災害」「医療」「教育」「戦争」と章立てして貧困大国アメリカの告発をしています。 そこで、ここでは何回かに渡って、堤未果さんの指摘から、アメリカの実相のいくつかを見ていきたいと思います。(文責:サイト管理者)


私は、堤未果さんのルポで初めて「マカロニ&チーズ」という食べ物を知りました。ゆでたマカロニに、ミルク、バター、チーズをこってりと混ぜたもので、スーパーマーケットなどで一箱3ドルで売られているそうです。カロリーが高く、味つけも濃いため、子どものランチ用インスタント食品として最も人気が高いといいます。これをおかずに、主食は「ピーナッツ・バター&ジェリー・サンドイッチ」だとか。これはパンにピーナッツ・バターとジャムをぬったものです。 ルポで登場する教師の言葉は、アメリカの現実を言い当てていました--「国はわかっていないんです。あの子たちの肥満の原因が貧困だということを」 そして、貧困児童の教育レベルの低さと肥満度は比例するのだということも。

企業や高額所得者から集めた税金を、教育や医療、福祉制度によって中間層に再分配するそれまでのニクソン大統領による福祉重視政策とは対照的に、レーガン大統領は効率重視の市場主義を基礎とした政策を打ち出した結果、中間層はみるみるうちに貧困層に転落したといいます。さらに、ブッシュ政権ではその貧困層への援助の削減などが進み、貧困層がますます増大していると言います。 そして、そうした貧困層は、政府が発行する「食料配給切符」(貧困ライン以下の家庭に配布される食料交換クーポン=「フードスタンプ」)が頼りですが、この「フードスタンプ」を利用するからには、できるだけ調理器具も調味料も必要がなく、それでいて少ない予算でお腹がいっぱいになるもの、つまり「マカロニ&チーズ」などが自ずと貧困層の食べ物として限られてくるのだと言うのです。 その結果、貧困層を中心に、過度に栄養が不足した肥満児、肥満成人が増えていくという構図です。そして、それから招かれる健康状態の悪化は、必要以上の医療費急騰や学力低下につながり、さらに貧困が進むという悪循環を生み出していくのだと堤さんは指摘しています。 (つづく)

【出典】『ルポ 貧困大国アメリカ』(堤未果著、岩波新書刊、700円+税)

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米国の戦争体制を支える多重構造の「日米地位協定」の問題点(2)

2008年07月29日 | 国際・政治
昨日に引き続き、日米地位協定の問題について新原昭治氏(国際問題研究者)の講演をもとに紹介した6月1日付け『しんぶん赤旗』から、その概要をご紹介します。(文責:サイト管理者)

■日本側裁判権の放棄に関する密約
さらに、裏の部分として日米間の密約というものがあると新原氏は指摘します。
米兵の「公務中」の事件・事故は1952年度~2006年度までで実に47650件にも上りますが、日本政府が米側の「公務証明書」に反証した事例として挙げているのは、わずか二例(2006年4月14日閣議決定の答弁書)。
一つは、1957年1月に群馬県・相馬ケ原演習場で発生した女性射殺事件=「ジラード事件」。
もう一つは、1974年に沖縄県・伊江島射爆場で起きた青年狙撃事件=「伊江島狙撃事件」だと言います。
しかし、「ジラード事件」については日本側が裁いたものの執行猶予付きの刑で、犯人は米本国に帰り、事実上の無罪放免となりました。裏には日米間の密約があったことがすでに米政府解禁文書で明らかになっていると言います。
また、「伊江島狙撃事件」については、当初、「公務外」としていた米側が突如、「公務中」だと言い出して日本側から裁判権を取り上げたため、卑屈にも日本側はこれに唯々諾々と従い、秘密の「覚書(メモランダム)」を交わしたと言います。新原氏は、その詳しい経過について入手した米政府解禁文書で初めて明らかにしました。
このように、米側が一方的に「公務中」と宣言すれば、日本側はほとんど抵抗も反論もできないまま、仮にそういうことができても米側が拒否すれば引き下がらざるを得ない状況になっていると指摘しています。

一方、地位協定は米兵の「公務外」の事件・事故は日本側に一次裁判権があると規定しています(17条3項b)。しかし、日本側は一次裁判権をほとんどの場合、放棄する密約を結んでいたことが米政府解禁文書で明らかになっています。

1957年にアイゼンハワー大統領に提出された世界の米軍基地の極秘報告は「秘密覚書で、日本側は日本にとり、著しく重大な意味を持つものでない限り、一次裁判権を放棄することに同意している」と明記されていると言います。
1962年12月~1963年11月までの1年間の資料ですが、本来ならば日本の裁判に付されるべき沖縄を除く在日米陸海空軍の米兵犯罪3433件のうち、日本側が裁判権を手放さなかったのは350件でしかなかったことなども新原氏が入手した資料から明らかになっています。

このように、米軍が世界規模で無法な戦争に乗り出すために、「三重底」「四重底」で基地体制を支える地位協定があるというその本質を明らかにし、国民的な批判を広げる取り組みが必要だと新原氏は指摘しています。

【出典】2008年6月1日付け『しんぶん赤旗』より

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米国の戦争体制を支える多重構造の「日米地位協定」の問題点(1)

2008年07月28日 | 国際・政治
女子中学生への性的暴行、タクシー運転手刺殺など、相次ぐ米兵の凶悪犯罪…。その背景に、米軍の特権的地位を定めた日米地位協定の問題があることが指摘されています。このほど、国際問題研究者の新原昭治氏が、都内で行った「米解禁文書に見る地位協定の構造的本質」と題した講演をもとに、同協定の刑事裁判権をめぐる問題についてまとめた記事が、2008年6月1日付け『しんぶん赤旗』に掲載されていましたので、概要をご紹介します。(文責:サイト管理者)

この中で新原氏は、1960年に日米安保条約に基づき締結された地位協定は「沖縄をはじめ日本全国に米軍基地体制が長く固定的に維持されるための非常に重大な法制」の一つで、「日本が独立国の名に値しない状況をつくりだしている」と言います。
その一例が、日本の主権行為の一環である刑事裁判から米兵を逃れさせる同協定の仕組みであり、それは米国の戦争体制を支える「三重底」「四重底」の実に巧妙な構造になっていると指摘しています。

■日米安保条約+日米地位協定+合意議事録
例えば、日本を旅行中の外国人や商社マンとして日本滞在中の外国人が罪を犯した場合、その外国人は米国人も含めて日本の法律に基づき裁かれる訳ですが、米兵の場合はそうとは限りません。
なぜなら、それは米兵が「公務中」に起こした事件・事故については、裁判権を行使する第一次の権利(一次裁判権)が米軍側にあると、地位協定では定められているからだと言います(17条3項a)。
それでは、その「公務中」の認定はどうするのかと言えば、日米合意議事録(1960年)で規定されていて、米軍指揮官が「公務証明書」を発行すれば、反証のない限り、「公務中」の十分な証拠資料になるとしています。つまり、米側が「公務証明書」を発行しさえすれば「公務中」と認められ、日本側が反証できなければ米兵の犯罪は裁けないことになるという訳です。
新原氏は、これが日米地位協定の表に出ている「表の構造」部分だと指摘しました。

■日米合同委員会の合意
また新原氏は、表に出ない部分もあると言います。その一つが地位協定の実施について協議する「日米合同委員会の合意」(原則、非公表)です。
例えば、法務省作成のマル秘資料によると日米合同委員会の合意には、車での基地外の住居と勤務場所の往復行為も「公務」となり、その際、飲酒をすれば「公務」の性格は失われるものの、「公の催事」での飲酒ならそうならないことなどを定めているとされます。
その場合、「公の催事」で飲酒した訳ですから、帰宅途中に交通事故を起こしても、「公務中」の事故ということになり、日本ではそれを裁けないことになります。こうした秘密合意はいくつあるのか分からないほどあるようです。
(つづく)

【出典】2008年6月1日付け『しんぶん赤旗』より

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「2008平和のための埼玉の戦争展」に行ってきました

2008年07月27日 | 国際・政治
P7270095
今年も7月24日(木)~28日(月)、浦和駅西口前コルソ7階ホールで「2008平和のための埼玉の戦争展」が開催されました。
1984年から開催されてきた「戦争展」ですが、今年は25回目、四半世紀を歩んで来たことになります。
今回は、案内チラシでも「紛争、貧困、生きづらさ、地球温暖化--世界はこのままでいいのでしょうか」……と呼びかけにあるように、今回は戦争だけでなく「人間の安全保障」に言及しているのが特徴だと感じました。
今年7月に北海道・洞爺湖で行われたサミットの報道をまじえて貧困と飢餓、地球温暖化など今日的問題と平和の関係をクイズ形式でわかりやすく展示したり、今年5月に行われた「9条世界会議」に参加した海外ゲスト35人の直筆メッセージを一挙公開したりするなど、新しい企画もあり、より充実した展示となりました。
もちろん、過去の戦争から学ぶとして沖縄戦の悲劇や戦時中の暮らし、東京や埼玉の空襲など、従来から行われている展示もありました。

■入口すぐの「いまの世界と向き合う」コーナーで、次のようなパネルがありましたので紹介します。【  】内はカバーで覆われていてめくると正解がわかるというクイズ形式でした。

・世界中には学校に行けず働かされている子どもが【2億】人います。
・日本では1年間に【3万】人が自殺に追い込まれています。
・日本の家庭の【20】%がワーキングプア状態です。
・世界には1日1ドル以下の苦しい生活を強いられている人が【12億】人います。
・世界では1日【25000】人が空腹で餓死しています。
・世界には水不足で苦しんでいる人が【17億】人います。
・世界では今も【30】分に1人が地雷を踏んでいます。
・世界には戦争により故郷を追われた難民が【2500万】人います。
・世界には戦争に参加させられている子ども兵士が【30万】人います。
・世界で1日に【200】種類の生物が絶滅しています。
・温暖化により100年後には【5.9】℃気温が上昇します。
・世界の陸地の【4分の1】が砂漠化しています。
・世界の熱帯林は日本の50倍、1年後に日本の【半分】が失われます。
・日本のいまの生活スタイルを世界中の人がすると資源は【3ヵ月】で失われます。
・世界で使われている軍事費は一日【2500億】円にのぼります。
・今もつづくイラク戦争では、イラクの人たちが【9万】人亡くなっています。
・戦争でお金がたりなくなったアメリカの借金の【40】%は日本が貸しています。
P7270096

※このブログをお読みの方で、「私も九条の会のアピール(「とだ九条の会」HPをご覧ください。)に賛同し、憲法九条を守る一翼になりたい」という方は、 「とだ九条の会」HPに「WEB署名」がありますので、「賛同署名」にご協力ください。
■「とだ九条の会」公式ホームページもご覧ください。
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