10月27日、国連総会第一委員会(軍縮)は核兵器を法的に禁止する条約の制定交渉を来年から開始することを盛り込んだ決議案を賛成多数で採択しましたが、唯一の戦争被爆国である日本政府は反対に回りました。
賛成は123カ国。一方、反対は核保有大国である米国、英国、フランス、ロシアを含む38カ国。中国など16カ国は棄権しました。核実験を繰り返してきた北朝鮮は賛成でした。
このことから、来年3月にも核兵器の開発や実験、保有、使用などを全面禁止する条約の枠組みづくりに向け、国連で初めて本格的な議論が始まることになります。
日本の佐野利男軍縮大使は、採決後、記者団に対し「核軍縮は核保有国と非保有国が協力して進めることが必要。国際社会の総意の下で進めるべきだと主張してきたが、意思決定のあり方に反映されなかった」などと反対理由に回ったことを弁明しました。
決議案を共同提案したオーストリアのクグリッツ軍縮大使は採択後、日本が反対したことについて「残念に思う」と述べました。
決議は「核兵器の使用がもたらす人道的に破滅的な結果を深く懸念する」とし、来年3月27日~31日6月15日~7月7日にニューヨークで「国連の会議を開き、核兵器を禁止する法的拘束力がある文書の交渉に入ることを決める」と明記しました。交渉の進め方や議論する具体的な内容などについては今後、協議していくとみられています。
しかし、米国など主要な核保有国は交渉に参加しない可能性が高いとみられ、核廃絶に向け、実効性のある条約が実際、制定できるかどうかは見通せない状況ということです。
<核兵器禁止条約> 核兵器の開発や実験、保有、使用などを全面禁止する条約。現在は構想段階。核廃絶への法的手段を討議するためジュネーブで開かれた国連作業部会は今年8月、2017年の交渉開始を国連総会に勧告するとの報告書を採択。米国などの核保有国は強く反発しているが、オーストリアやメキシコなどは今年10月、17年3月の交渉開始に向けた決議案を国連総会に提出していた。 (共同)
【出典参考】2016年10月28日付け 「東京新聞」夕刊
※以下、関連情報を転載させていただき掲載します。(サイト管理者)
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<「日本の立場に合致せず」“核兵器禁止”日本は反対>
国連の委員会で、核兵器を全面的に禁止する条約を目指す決議が賛成多数で採択されました。しかし、唯一の被爆国である日本は反対票を投じました。ニューヨークから報告です。
(横地明子記者報告)
被爆国であるにもかかわらず、核兵器の禁止に「反対」するという矛盾した判断は、アメリカの核に守られているという現実を優先した結果となりました。オーストリアが主導する決議は、核兵器の開発や実験、使用などをとにかく全面的に禁止しようというもので、核兵器の削減が進まない長い歴史に核を持っていない国々がしびれを切らし、動き始めたものです。日本はこれまで、核を保有する国と保有していない国のいわば「橋渡し」をしようと努力してきましたが、この決議に関しては、核保有国側に付いた格好となりました。実はこの国連総会の委員会では日本も核を減らそうという決議を提案していました。なかでも重要だったのは、核保有国のアメリカを巻き込むことでした。そのアメリカは、オーストリアが主導する決議に反対票を投じるよう各国に強く求めていたことが日本が「反対」票を投じた背景にあると考えられます。議論を主導したオーストリアの大使は、日本の態度に非常に残念だと話すなど波紋が広がっています。
岸田外務大臣:「反対の理由は、核兵器のない世界を目指す我が国の基本的立場に合致せず、核兵器国と非核兵器国の間の対立を一層、助長し、その亀裂を深めるものだからだ」
そのうえで、岸田大臣は日本が主導した核兵器廃絶決議の方にはアメリカなどの核保有国も含めて167カ国が賛成したとして、「我が国の決議こそ核兵器のない世界への現実的な道筋を示すものだ」と強調しました。
【出典】2016年10月28日配信「テレ朝news」
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<核禁止交渉決議 被爆者ら落胆「政府、何をしているか」>
核兵器禁止条約の実現に向け、重い第一歩となった28日(日本時間)の国連総会第1委員会(軍縮)での決議案採択。今年5月に広島を訪問したオバマ米大統領と対面し、核廃絶への機運を感じた2人の広島の被爆者は、決議案採択を歓迎する一方で、米国、そして日本の姿勢に不信を募らせ、複雑に受け止めた。
「一歩も二歩も前進した」。広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長(91)は決議案採択をこう喜んだ。しかし、日本など「核の傘」の下にある国や核保有国が反対したことに「(国際社会が)ますますバラバラになるのではないか」と心配する。
坪井理事長は今年5月、広島市の平和記念公園を訪れたオバマ氏と握手し、言葉を交わし、「やさしい人だ」と話す。しかし、今回の決議案採択の前、米国は北大西洋条約機構(NATO)諸国に反対に回るよう圧力をかけた。坪井理事長は「つまらんことをしていると思う」。さらに、唯一の戦争被爆国ながら反対した日本政府には「『ばか者』と言いたい。何をしているのか」と憤った。
一方、被爆死した米兵について調査研究を続ける広島市西区の森重昭さん(79)は「123カ国もの賛成で、条約交渉開始が決まったことは重みがある」と評価。オバマ氏の演説を聴いた森さんは「演説では、日本だけでなく米兵や朝鮮半島出身の被爆者にも言及し、本気で核廃絶を目指しているのを確信した」という。それでも米国の姿勢に変化はなく「理想と現実との乖離(かいり)は大きいのか」と落胆。日本政府が反対したことにも「被爆国としてとても残念で悲しい。核保有国と非保有国との橋渡し役を果たしてほしい」と願った。
■「米国に追随」非難続々
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は28日、内閣府と外務省に声明文を送り、「被爆者であり同じ国の民として断腸の思い」と強く非難。「米国への追随ではなく、被爆者と共に核兵器のない世界実現に全力を尽くす」よう求めた。広島で胎内被爆した事務局次長、浜住治郎さん(70)=東京都稲城市=は「日本が反対したことは絶対に許せない。ヒロシマ、ナガサキは何だったのかという思いだ。71年たった今も被爆者が苦しみ、訴え続けてきたことを政府はどう思っているのか」と憤った。
原水爆禁止広島県協議会(広島県原水協)も「政府は『生きているうちに核兵器廃絶を』という被爆者の切実な願いに応え、被爆国政府として国際社会からも信頼されるよう行動すべきだ」とする要請文を、安倍晋三首相と岸田文雄外相あてに送付。広島市の市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」も「日本国民のみならず平和を願う世界の市民には到底理解できず許せない。5月の広島訪問の際、オバマ米大統領と安倍首相は慰霊碑の前で核の被害者に何を誓ったのか」との抗議文を送った。
平和問題を研究するNPO法人「ピースデポ」(横浜市港北区)の田巻一彦代表は、日本が決議案反対に回ったことについて「驚がくの結果だ。被爆国としての歴史的責任を果たせるのか」と疑問を呈し、「失った信頼を取り戻すには相当な努力がいる」と懸念した。123カ国の賛成で採択されたことには「被爆者の訴えが届いた現れだ」と評価した。
【出典】2016年10月29日配信「毎日新聞」
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