とだ九条の会blog

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「今後戦争になるということがどうしても信じられない」という人に

2006年08月29日 | 国際・政治
世の中は、改憲の動きにしても、日米軍事同盟の動きにしても、ますます「戦争ができる国」づくりに進んでいます。しかし、国民には「(このままでは)今後戦争になるということがどうしても信じられない」という疑問を持つ人も少なくありません。
そんな方に説得力ある説明を見つけました。
以前、当ブログでも紹介したその名も『憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本』(日本評論社刊)という本の一節です。
山田朗氏(歴史学者、明治大学文学部教授)、森永卓郎氏(経済アナリスト、獨協大学教授)、木下智史氏(憲法学者、関西大学法科大学院教授)が担当された「憲法と現代戦争Q&A」のコーナーにある設問をちょっと引用させていただきます。
「今後戦争になる、ということがどうしても信じられないのですが?」との問いに……。

1920年代、第一次世界大戦によるバブルの崩壊で、緩やかなデフレが続いていました。そこに1923年の関東大震災が追い討ちをかけ、1927年には金融恐慌が発生しました。その時、生産性の低い企業を整理して、より強い企業に生産を集約しようという気運が高まりました。これは「財政整理」と呼ばれました。……1929年、「この閉塞感のある社会を打ち破る」と言って首相に就任したのが民政党総裁だった浜口雄幸(はまぐち・おさち)でした。浜口は就任と同時に改革に取り組みます。財政再建のために大胆な歳出カットをし、強烈な金融引き締めを断行しました。デフレのなかで財政と金融を同時に引き締めたのですから、日本経済は激烈なデフレに陥りました。それでも日本国民は浜口首相を圧倒的に支持したのです。浜口は国民に言いました。「明日伸びんがために、今日は縮むのであります。これに伴う小苦痛は、前途の光明のために暫くこれを忍ぶ勇気がなければなりません」


これは1931年の満州事変につながる我が国の1920年代の政治・経済の状況です。
「財政整理」とは、今でいう「不良債権の処理」のこと。
「(利益誘導型の財政をムダ遣いする古い政治を継続していた)自民党をぶっ壊す」と言って登場した小泉首相は、「改革なくして、成長なし」と財政と金融を締め上げて、大企業などへの規制を緩和し、社会保険料や消費税は値上げしていく、「その改革には痛みを伴うから国民には暫く我慢をしろ」と言う。こうしてごく一部の強い人だけが生き残り、弱い人はどんどん切り捨てられていき、格差はどんどん拡大していく。これが小泉首相の「構造改革」ですが、1920年代も、国民は所得の二極分化の中に沈んでいったと言うのです。

『憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本』では、続いてこう説明します。

何が言いたいか、もうおわかりいただけたと思います。満州事変が起きたのは1931年です。1920年代、あの戦争前夜と1990年代以降の現在は、驚くほどよく似ています。人間というのは悲しい性(さが)を持っているようで、苦しければ苦しいほど強いリーダーを求めてしまうのです。そして、誰もそれにNOが言えない体制になっていくのです。小泉首相のやることには、今や誰もNOと言いにくくなってしまっています。戦争や、戦争に結びつくものに反対することは、10年前には当たり前のことでしたが、現在では「非国民」とさえ言われて非難されるようになりました。
浜口は戦争には反対していました。しかし、彼がつくった挙国一致体制が、満州事変に結びついたのです。小泉首相も戦争に賛成しているわけではないでしょう。しかし、小泉首相の後を継ぐ人が、この挙国一致の空気をもし利用すれば、最悪の事態になりうるということです。


●よかったら詳しくは『憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本』(日本評論社刊、1400円+税)をお読みください。井筒和幸さん、室井佑月さん、高橋哲哉さん、斎藤貴男さん、ほか多彩な執筆人がわかりやすく解明しています。


■「とだ九条の会」公式ホームページもご覧ください。
http://www15.ocn.ne.jp/~toda9jo/


コメント (1)
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