タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

卵管通気テストで何が分かる?

2018-07-11 21:18:12 | 不妊症
久しぶりに不妊症の話題です。
先日、豊岡病院で不妊治療を受けられているというカップルが来院され、
子宮卵管造影検査のことを質問されていかれたのですよ。
そうですね、タマル産より北の方では、不妊治療をしている施設が無いのですから困ったものですね。

子宮卵管造影という検査は、子宮の中に造影剤を通して、その先の卵管までの通り具合を見るものです。
この造影剤には大きくは2種類有って、油性と水性です。
造影剤には、ヨードが含まれているので、甲状腺の働きに悪影響が有ると言われていて、
最近はあまりしない方向にあるのですよ。
ヨードがお腹の中に蓄積して、半年間くらい、かえって妊娠率が落ちるというものです。
ですが昔は普通にこの検査をしていて、この検査の後に妊娠することもよく有りましたから、
本当かどうかはもう少し検討が必要でしょうけれど。

それで卵管の通り具合を見るなら、通気テストがおすすめです。
放射線の被曝も無いし、ヨードも使わないし、卵管の動きまで検査できるのですから。
ところが豊岡病院ではこの検査はしていないようでしたよ。

今年になって、ある有名な病院で、通気テストの後に亡くなられた事件が報道されましたが、
あれは通常使う炭酸ガスでなく、なぜか空気を使用したとのことです。
炭酸ガスは二酸化炭素ですからすぐに血液に溶けますが、
空気は窒素ガスが主体ですから、血液に溶けませんからね。
血管に空気を入れると自殺が出来るくらいですから、なぜそんな事件が起こったのかは分かりません。
ということで通常は危険な検査ではありませんよ。

そこで上の写真を見てください。
タマル産で実際に受けられた方の一例です。
縦軸は炭酸ガスの注入圧力で、200mmHgまで圧力をかけることができるのです。
真ん中より下の80mmHgあたりで、上がったり下がったりしているでしょう?
同じ検査を続けて2回しているので、2つの山が有ります。
圧力をかけると上がり、卵管が通ると下がり、また閉まって圧が上昇し、を繰り返しています。
卵管って、イソギンチャクのように、閉じたり開いたりするのですね。

ところでイソギンチャクを見たことが有りますか?
私は以前、グッピーと一緒にイソギンチャクを飼っていたのです。
水槽に張り付いてユラユラ揺れるものだと思われるでしょう?
ところがびっくりしたことに、イソギンチャクって、動き回れるのですよ。
それもすごい勢いでね。飼うのはオススメしませんからね。


次に2つ目のグラフを見てもらいましょうか。
今度の女性では、圧が高いでしょう?
200mmHgの圧力をかけると、ようやく通過するのが分かります。
2回目は160くらい、3回目はやはり200くらいの力を加えないと通りませんでした。
そう、通過障害が有るようですね。
しかも通った後の卵管の動きも少し悪いようです。
癒着も疑われますね。
この間、聴診器をお腹に当てて、炭酸ガスの通過する音も左右で聞き分けるのですよ。

この2つ目のグラフの女性は、以前にクラミジア頚管炎という性感染症になられたことが有り、
治療後もこのように、通りが悪くなったりするのですね。
まったく詰まっているわけではないので、とりあえず保存的な治療を進め、
早い段階で、体外受精に移行した方が良さそうです。
うまく妊娠しても、よく子宮外妊娠になられるのは、このような卵管だからです。

あと、よく質問が有るのは、卵管の検査って、痛いですか?というものです。
でもね、検査中はそれほど痛くありません。
というのは、タマル産では、子宮の中に小さな2mLの風船を入れて、そこからガスを流すからです。
他院ではよく、子宮を2つの鉗子で挟んで、引っ張りながら検査をされるので、
痛かったりします。

また子宮卵管造影をしている施設では、放射線室で検査を受けるので、
事前に婦人科外来で、鉗子をかけておき、放射線室まで移動しないといけないところも有ります。
造影剤は粘稠で、量も多いですから、痛がられる方は多いですね。
それに子宮の入り口を少し開大させるので、その痛みも有って、
血圧が下がって、点滴をして昇圧させなければならないことも有りますしね。

結局、卵管通気テストで、タマル産方式では、それほど痛く有りません。
ただし家に帰ってから、夜くらいに、背中が重たくなります。
それは腹腔内にガスを入れると、排卵して腹腔に出血が溜まった時のように、
右肩に張りが見られるのです。
たいていは我慢できるくらいですが、たまにすごく痛んだという方は居られます。
そういう場合は横になれば和らぎますからね。

不妊症の検査は、1つとってみても、不安なことが多いですよね。
外来で、遠慮なく質問してくださってけっこうです。

もう1つ、ポイントを書くのを忘れていました。
よくマウスの実験では、子宮に炭酸ガスを通すと、それだけで子宮が妊娠したように大きくなります。
これを偽妊娠(ぎにんしん)と言います。
だから卵管通気テストの後に、自然に妊娠することが多いのはこのせいでしょう。
ついでに言うと、マウスの背中をさするだけで、同じように妊娠したような子宮になります。
人にも、愛撫が重要だということでしょうか。

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