タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

たかが便秘、されど便秘

2017-12-25 21:18:40 | 産科
篠山市東吹の耀太(ようた)くん、11月7日生まれ。
「元気が一番。思いやりのある人になってください。
スムーズに、思ったより早く出産でき、楽でした。
育児についての不安が有りましたが、皆さんに親切に対応して頂き、心が晴れました。」

初めてのお産でしたが、安産で良かったですね。
今日のクリスマスは、先ほど赤ちゃんが生まれたところなのですが、とっても難産でしたからね。

それでは今日は、便秘のお話をしましょう。
どうして便秘か、と言えば、先ごろ日本消化器学会から、
慢性の便秘に対してのガイドラインが発表されたからなんです。
そう、最近では医師の裁量という言葉は死語となり、
ガイドラインに従って治療をしないといけないというのですから、
AIにでも仕事をまかせても良さそうですね。

むかし、滋賀県の豊郷というところの病院でアルバイトをしていた時に、
あるお婆ちゃんが来院されました。
お腹が張るから、何かお腹に「できもの」が有ると思い込まれていたのですね。
ただの便秘ですよ、毎朝トイレに行くようにと言ってあげただけなのですが、
それからそのお婆ちゃんはすっきり良くなって、とても感謝された思い出が有ります。
言葉の威力とは凄いですね。

それで、妊婦さんの便秘はどうすれば良いでしょうか?
妊娠すると便秘になりますよね。
京大病院では、研修医時代に、三つ子を妊娠されていた女性が居られました。
妊娠後半はお母さんは寝たきりです。
しかもお腹の張り止めを点滴しますから、この薬の副作用でさらに便秘になるのです。
信じられないかもしれませんが、研修医の仕事に、
ウンチを手袋をした指で排出させるというものが有ります。
ちゃんと保険で、「摘便」という点数が有りますよ。

そこまでしなくても、普通は便秘の薬を処方するのです。
以前の教科書には、妊婦さんの便秘には、腸を刺激するタイプの下剤だけが適応と載っています。
市販薬で言うなら、コーラックなどの、刺激性下剤という薬ですね。
ですが今の教科書では、妊婦さんには禁止されている薬物に分類されているのですからね。
ちなみに外科では、この薬は術後などに、それこそ大量に処方されますよ。

それが今回のガイドラインで、高齢者の慢性便秘にも、この刺激性下剤よりも、
塩類下剤というものを使いなさいということになりましたよ。
塩類下剤とは、カマグとか、マグラックスとか、マグミットとか、
マグネシウムの「マグ」の付いた名前の薬です。
これは腸の中で水分を吸収して、便を柔らかくして出させる薬なのです。

もう1つ、高齢者に使ってもよい下剤には、ルビプロストンという薬も推奨されました。
こちらはマグネシウム製剤のように、電解質の異常を来さない代わりに、
妊婦さんには禁忌なのですよね。
だから処方したことは有りません。
なんだ、妊婦さんが使っても良いのは、マグネシウム製剤だけだったのですね。

よくお茶で、センナ茶というものが売っていて、
妊婦さんでも勧められることが有るかもしれません。
ですがこのセンナは、先ほどの刺激性下剤そのものですから、やめておいた方が良いのです。

もう1つついでに下剤のことをお話するなら、
どこの産婦人科でも、陣痛で入院すると、まず浣腸をされますよ。
お産で赤ちゃんが生まれる時に、排便が有るのを医療者は嫌がるからです。
それは会陰を清潔に保てないと考えているからですね。
会陰切開をする時に、縫合するのにも不衛生だと考えるからです。

ですがタマル産では、お産の時に浣腸はしないのです。
そんな産婦人科は他に無いかもしれませんね。
会陰切開もあまりしませんしね。
それどころか、会陰の消毒もあまり積極的には指導されませんね。
理由はカンタンです。
それほどこちらは気にしないからです。
昔の人は、いちいちお産で、消毒なんてしなかったのではないでしょうか?
むしろお母さんが気にされることも有りますが。

タマル産では基本的に、お産の時に導尿もしないのですね。
導尿とは、膀胱に管を入れて尿を取ることです。
看護学生さんは、ルーチンで導尿を習得するのですが、
そんなものしなくたって、お産には何の問題も有りませんよ。
何千人ものお産についている医師が言うのですから、間違いありませんよ。