タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

2017年クリスマス会でした

2017-12-08 21:12:44 | 産科
昨日は、タマル産ではお約束のクリスマス会でした。
もちろんその前の午前中は勉強会と避難訓練をしてからですよ。
ちょっとしたゲームなんかもして、けっこう盛り上がりました。
久しぶりにほぼ全員のメンバーが揃いましたよ。
赤ちゃんを産まれたお母さんなら、懐かしい顔も有るのではないですか。

勉強会の中身は興味が有りますでしょうか?
大きくは3つに分かれて、1つは産後の弛緩出血。
2つ目は新生児蘇生法の、とくにアドレナリンを使うまで。
そして来週から始める遠隔診療についてです。

まずは産後の弛緩出血です。
何度も言いますが、日本は世界一、お産では安全な国なのですよ。
ですが皆さんはそれでも満足ができないでしょう?
危険率がゼロにならないと、赤ちゃんを産みたくないでしょうからね。
でもゼロになんて、絶対にできません。
それどころかこんなに安全なのに、まだ上を目指そうとすれば、
それは費用対コストが、すこぶる悪くなりますよ。

これ以上安全を目指すより、むしろ気持ちの良いお産を目指した方が良いと思うのですよ。
少なくとも私の願いは、それなのです。
安全を目指すと帝王切開が増える。
ですが帝王切開は、お母さんにとってはとても危険が高い手術ですからね。
安全だと思って受けたのに、生命を落とすことにもつながりますよ。
有名な大野病院事件だって、帝王切開で生命を落としたのです。
いくら輸血を大量に用意していたって、輸血の速度より出血の速度の方が速いのですから。

それでもコストをかけずに、弛緩出血での生命に関わるリスクを下げる方法が有ります。
その知識を共有したというわけです。
美容皮膚科で治療するのですが、更年期頃に多い肌のトラブルで、
左右の頬にシミができる、「肝斑」というものが有ります。
これを治療する飲み薬は、トラネキサム酸と言います。
昔から有る薬なのですが、血を固める薬なのです。

このトラネキサム酸を、産後の出血や、交通事故でも使って良いのですが、
使用するだけで生存率を有意に上昇するというデータが出ました。
投与が15分遅れると、死亡率が10%上昇するのです。
ただし3時間以上経ってから点滴しても効果が無かったのです。

ところでお産の出血で生命を落とすのは、40%が出血死です。
しかも出血後、たったの2〜3時間が最も多いのです。
輸血なんてしたって間に合いませんね。
それよりも、トラネキサム酸を含めた初期治療と、
それでも止血できない場合は、子宮に行く動脈を塞栓させるという手段が良いのです。
ただしこの辺りでできるのは、神戸大学くらいですよ。
みなさんは総合病院で産むと安全だと思われているでしょうが、
それよりも高速道路の入口に近い産婦人科の方が安全性が高い、ということを知るべきですね。
ちなみにヘリコプターは、24時間のうちの日の高い、たったの8時間くらいしか飛びませんからね。

あと2つのお話はできませんでしたね。
まあ、世界一安全なのだから、いい加減、安全信仰は持たない方が良いと思うのです。
メディアが煽りすぎですね。
ほら、大阪なんて、産婦人科の医師を集めて再教育することにしたのですって。
そんなのは、ポーズでしか有りませんよ。