タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

既往帝王切開でのお産

2017-02-03 21:36:36 | 産科

上の写真は、丹波市柏原町の煌翔(あきと)くん、12月27日生まれ。
「兄弟仲良く3人で元気にすくすくと、優しく笑顔あふれる子に育ってください。
とても快適に6日間過ごせました。足のマッサージも気持ち良く、個室でゆっくりできました。
満足のいく料理ばかりで、作り方を聞いた料理も有りました。」

3人目ともなると、余裕が感じられますね。
お産を楽しむレベルにまで達している感が有ります。

今日は節分でしたが、鬼は外はされましたか?
舞鶴に鬼の神社というのが有るでしょう?
鬼は金棒を持っているし、きっとタタラで製鉄技術を持った渡来人が由来なのでしょうね。
ついでに天狗は、白くて鼻が高いから、西洋人だったのではないでしょうか。
子供たちが小さいうちは、「だるまちゃんとかみなりちゃん」などの絵本を呼んであげましたか?
すごく親しみが湧くではないですか。

さて、昨日は2人のお母さんがお産されました。
2人ともたいへんなお産でしたよ。
何がたいへんかと言えば、他院であれば2人とも帝王切開になっていたであろう、という意味です。

何度も繰り返しますが、できれば帝王切開は避けた方がいいのですよ。
もちろん必要が有れば、すぐにしないといけないものですが。
経膣分娩の方が良い理由は、帝王切開なら母体死亡率が10倍近く上昇するからです。
また帝王切開で生まれてきた赤ちゃんは、しばらく肺水が引かず、
保育器生活をしないといけないほど、ストレスがかかるためでしたね。

1人のお母さんは、お産の中程まで進んだ時に、突然胎児の状態が悪くなったのです。
分娩監視装置という器械で、胎児の心音を持続的に聴いていますから、
調子が悪いとすぐに分かりますからね。
医学用語では「胎児ジストレス」と言います。
むかしは胎児仮死と言ったのですが、これでは後遺症が残ると勘違いされるので、
もっとマイルドな呼び名になっているのです。

こんな時は緊急で産んでもらわないといけません。
子宮口が開いていなければ緊急帝王切開しか有りません。
開いていれば吸引分娩が考慮されます。
タマル産では、2人目のお母さんだったので、
子宮口6センチくらいと全開していない状態でしたが、
用手開大という方法で全開にし、お腹を圧迫することなく、
膣の出口を塞ぐ肛門挙筋(こうもんきょきん)を広げることで、30分以内に分娩とすることができました。
これなら結果的には帝王切開をするより早く、しかも安全なお産となりました。
ギリギリの判断が要求されます。

続いてのお産は、前回が帝王切開のお母さんです。
本当は1回目に他院でさかごで帝王切開を受けておられたので、
できれば帝王切開をおすすめしたのですが、
医療従事者でも有り、リスクも承知でぜひ産みたいということでしたので、お引き受けしました。
それでもたいへんなお産でしたよ。

へその緒が引っ張れて長引くお産には、陣痛促進剤が有効なのですが、
一度帝王切開をしていると、プロスタグランジンという薬は禁忌です。
アトニンという薬は慎重投与に分類されていて、一応使ってもいいのです。
ですが、これではあまりいきみ感がでないのですよね。
産後に子宮から出血が無いかをチェックして、バイタルサインも一晩チェックして、
これで一安心ですよ。

やはり既往帝王切開のお母さんは、経膣分娩したいなら、輸血もできる施設の方が安心ですよ。
ただし経膣分娩できる施設は限られているのでしょうが。

今日はとりとめの無いお話でしたので、
タマル産の中庭がリニューアルしたことをご報告しておきましょう。

目の醒めるようなレンガに、ブルーのかけらが混じって輝いています。