歌番号 124 拾遺抄記載
詞書 春宮にさふらひけるゑに、くらはし山に郭公とひわたりたる所
詠人 藤原実方朝臣
原文 佐川幾也美 久良波之也万乃 本止々幾須 於保川可奈久毛 奈幾和多留可奈
和歌 さつきやみ くらはしやまの ほとときす おほつかなくも なきわたるかな
読下 さ月やみくらはし山の郭公おほつかなくもなきわたるかな
解釈 五月の闇の倉橋山のホトトギスは、その闇暗しの言葉の響きではありませんが、はっきりしない様子で鳴き渡っています。
歌番号 125 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 本止々幾須 奈久也左川幾乃 美之可与毛 飛止利之奴礼者 安可之可祢川毛
和歌 ほとときす なくやさつきの みしかよも ひとりしぬれは あかしかねつも
読下 郭公なくやさ月のみしかよもひとりしぬれはあかしかねつも
解釈 ホトトギスが啼く皐月の短い夜も、独り寝をすると、物思いでなかなか明かし辛いものがあります。
注意 和歌の約束では、ホトトギスはカッコウのことで、カッコーカッコーと啼く声を片恋片恋と聴きます。ここでは恋人を思って寝付けないとの歌意になります。拾遺抄では、この歌柿本人まろが集にいれり、とある。
歌番号 126 拾遺抄記載
詞書 西宮左大臣の家の屏風に
詠人 源したかふ
原文 保止々幾須 万川尓川个天也 止毛之寸留 比止毛也万部尓 与遠安可寸良无
和歌 ほとときす まつにつけてや ともしする ひともやまへに よをあかすらむ
読下 ほとときす松につけてやともしする人も山へによをあかすらん
解釈 ホトトギスの啼くを待つ、その言葉の響きではないが、松明に火を付けて明りを灯す人も、山辺で夜を明かすようです。
歌番号 127 拾遺抄記載
詞書 延喜の御時、月次の御屏風に
詠人 つらゆき
原文 左川幾也万 己乃志多也美尓 止毛寸飛者 之可乃多知止乃 志留部奈利个利
和歌 さつきやま このしたやみに ともすひは しかのたちとの しるへなりけり
読下 さ月山このしたやみにともす火はしかのたちとのしるへなりけり
解釈 五月の山の木の下の、その草葉が生い茂った暗闇に、灯す火の明りは鹿が立っている場所を示す目印でした。
歌番号 128 拾遺抄記載
詞書 九条右大臣家の賀の屏風に
詠人 平兼盛
原文 安也之久毛 志可乃多知止乃 美衛奴可奈 遠久良乃也万尓 和礼也幾奴良无
和歌 あやしくも しかのたちとの みえぬかな をくらのやまに われやきぬらむ
読下 あやしくもしかのたちとの見えぬかなをくらの山に我やきぬらん
解釈 どうした訳か、鹿が立っている姿を眺めることが出来ません、小暗いと言う名を持つ小倉山に私はやって来たのでしょうか。
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