歌番号 1179 合作歌
詞書 中将に侍りける時、右大弁源致方朝臣のもとへ、やへこうはいををりてつかはすとて
詠人 右大将実資/むねかたの朝臣
原文 利宇曽久乃 以呂尓者安良寸 武女乃者奈/知武知宇須部幾毛 乃止己曽美礼
和歌 りうそくの いろにはあらす うめのはな/ちむちようすへき ものとこそみれ
読下 流俗のいろにはあらす梅の花/珍重すへき物とこそ見れ
解釈 巷の流行の色合いとは違う梅の花よ、珍重すべきものとして眺めなさい。
注意 二人による上句に下句を付ける遊び歌です。
歌番号 1180 合作歌
詞書 つくしへまかりける時に、かまと山のもとにやとりて侍りけるに、みちつらに侍りける木にふるくかきつけて侍りける
詠人 もとすけ
原文 者留者毛恵 安幾者己可留々 加万止也万/加寸美毛幾利毛 个不利止曽美留
和歌 はるはもえ あきはこかるる かまとやま/かすみもきりも けふりとそみる
読下 春はもえ秋はこかるるかまと山/かすみもきりもけふりとそ見る
解釈 春は緑が萌え、秋は紅葉が焦がれる、竈山、それで、霞も霧も煙かと見間違えます。
歌番号 1181 合作歌
詞書 春、よしみねのよしかたかむすめのもとにつかはすとて
詠人 藤原忠君朝臣/むすめ
原文 遠毛飛多知奴留 个不尓毛安留可那/加々良天毛 安利尓之毛乃遠 者留可寸美
和歌 おもひたちぬる けふにもあるかな/かからても ありにしものを はるかすみ
読下 思ひたちぬるけふにもあるかな/かからてもありにしものをはるかすみ
解釈 貴方の許を訪れようと思い立った今日のことであります。無理に今日、訪れなくてもいいものを、山に懸かる春の霞、その言葉の響きのような、かかることではないのですから。
歌番号 1182 合作歌
詞書 ひろはたのみやす所、内にまゐりておそくわたらせたまひけれは/とそうし侍りけれは
詠人 ひろはたのみやす所/内
原文 久良寸部之也者 以末々天尓幾美/止布也止曽 和礼毛万知川留 者留乃比遠
和歌 くらすへしやは いままてにきみ/とふやとそ われもまちつる はるのひを
読下 くらすへしやはいままてにきみ/とふやとそ我もまちつるはるの日を
解釈 これほどに遅くまで日を暮らすものでしょうか、今に至るまで、君よ。貴女はそのように詰問しますが、私は待っていたのです、冬が終わりこの長い春の一日を。
歌番号 1183 合作歌
詞書 よひにひさしうおほとのこもらて、おほせられける/御前にさふらひてそうしける
詠人 天暦御製/しけののないし
原文 佐世布遣天 以満者祢不多久 奈利尓个里/由女尓安不部幾 比止也末川良无
和歌 さよふけて いまはねふたく なりにけり/ゆめにあふへき ひとやまつらむ
読下 さ夜ふけて今はねふたくなりにけり/夢にあふへき人やまつらん
解釈 夜が更けて今は眠たくなりました、それは夢の中で逢うべき人が待っているからですか。