旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

低迷期を脱しつつある日本酒

2015-01-12 13:19:56 | 

 

 1973年頃をピークに、日本酒の消費量は減少を続けている。ピーク時1,766千klあった消費量は、いまや600千klを割って3分の1になってしまった。この現象はまだまだ続くであろう。何故なら、この間減少した主因はアル添三増酒(アルコールや糖類、調味料などを添加して三倍にも水増しした酒)という美味しくないまがいもの酒で、その種の酒は未だまだ残っているからだ。
 日本酒は不幸な戦後史を辿った。戦後から高度成長期まで、日本人の飲む酒はほとんどがアル添三増酒であった。アルコールをダブダブ混ぜ、糖類(水飴など)や調味料(味の素など)で増量された酒は、甘ったるくて美味しくなく、頭が痛くなり、二日酔いして吐きまくった。「日本酒は美味しくなくて悪酔いする」という観念は日本人に定着した。
 この種の酒は上述のごとく減り続けているが、反面、本来の日本酒である純米酒は増え続けた。1970年ごろまではほとんどゼロであった純米酒(含む純米吟醸酒)のシェアは、今や20%に届こうとしている。そしてこの酒は、その多様性とともに大変おいしい。もちろん添加物のないこの酒で、悪酔いすることはない。
 いろんな場で日本酒を薦めると、多くの人が「日本酒は頭が痛くなるから」、「翌日に残るから」と、従来の固定観念を引きずっている。「騙されたと思って飲んで」と再度薦めてやっと飲んでもらうと、「美味しい!」と驚き、翌日、「あなたに薦められかなり飲んだが、今朝頭がすっきりしている」と電話がかかる。
 日本酒がおいしくなった、という人は専門家に限らない。かなり増えてきたが、そのシェアから見ても未だ20%の日本人に過ぎないと言えよう。多くの人は前述の固定観念にとらわれ、日本酒離れを起こしている。これが日本酒戦後史の第二の不幸だ。日本酒は客を失った後においしくなったのだ。 
 百花繚乱咲きにおう日本酒が、今ほど美味しくなった時期は過去にない。しかしそれを飲む客がいなくなった後なのだ。どうすればいいのだろうか? (つづく)


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