6月11日(水)に80歳代後半の女性が、泌尿器科(非常勤医)からの紹介で内科外来を受診した。最近食欲不振・嘔気があり、体重減少(3kg)もある。内視鏡検査は受けていないとあったのは、消化管悪性腫瘍の精査をという意味らしい。
再来が多い日で11時の予約だったが、12時過ぎになった。来院してからは処置室のベットで休んでいたので、診に行った。会話は普通にできて認知症ではないようだ。いっしょに外来診察室まで歩いて来てもらった。
もともとは高血圧症・糖尿病で市内の消化器系のクリニックに通院していた。今年になって、心房細動(発作性だった)になったので、市内の循環器科のクリニックに紹介されていた。
心不全と糖尿病の治療も兼ねてSGLT2阻害薬(ジャディアンス10mg)が開始された。経口血糖降下薬も、それまでのエクメットHD2錠(エクア50mg+メトホルミン500mgを朝夕2回)にメトホルミン250mg錠朝夕2回が追加されたので、メトホルミンは1500mg/日に増量になっていた。
SGLT2阻害薬の効果は3か月で3kgくらいの減量にはなるので(1日ブドウ糖約400Kcalが強制的に尿に排出される)、体重減少は効果そのものということになる。
メトホルミンは初期量の500mg/日から、1000mg/日、1500mg/日と漸増すると嘔気・下痢・食欲不振の副作用が増加する。本来は75歳以上には新規に投与しないことになっていて、それまで投与されていれば継続可だが年齢的には1日500mg/日だろう。
心電図では心房細動ではなかった(規則的なリズムだが心房調律)。浮腫はなく、減量を反映してお腹の皮膚がたるんでいた。現在SGLT2阻害薬は心不全のほぼファーストチョイスになっているが、高齢者(それも80歳代後半から90歳代)には向かないようだ。
この患者さんは元々は体重が多めだったが、12日に地域の基幹病院から転院してきた90歳代前半の女性(サルコぺニア。フレイル)は、体重30kgでSGLT2阻害薬(ジャディアンス10mg)が処方されていた。
体重減少や食欲不振・嘔気は薬剤性の可能性があるので、まず減薬して経過をみてみましょう、ということにした。ジャディアンスは休止して、エクアLD(エクア50mg+メトホルミン250mg)のメトホルミン500mg/日とした。
HbA1cは6.8%だったので、減薬してもその分の血糖上昇は7.5%くらいに留まるのではないか。減薬した分、糖尿病と心不全の治療は弱めたことになるが、そこはバランスの問題だ。
悪性腫瘍の検査としては、おおざっぱな検査にはなるが負担の少ない胸腹部単純CTで確認することにした。明らかな腫瘍は認めななかった。炎症反応は陰性で、感染症も否定的だった。
泌尿器科医としては、膀胱炎をきたしたので受診時にその旨を伝えるよう指示していたが、SGLT2阻害薬は継続になっていた。ちなみに、現在入院している70歳代前半の女性は急性腎盂腎炎・菌血症で、別の医院からやはりSGLT2阻害薬が処方されていた。
大規模臨床試験の結果エビデンスが出ていると、それに従わなければならないようになる。しかし、そもそもそういう試験は65歳未満の患者さんで行っていて、高齢者は対象外になっている。(超高齢者の臨床試験なんて、有意差が出せないから絶対にやらないだろう)
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