なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

急性腹膜炎(修正)

2016年10月17日 | Weblog

 先週の土曜日は日直だった。50歳代のめまいの女性が数人続いたが、受診数は少な目だった。午後5時に79歳男性が腹痛で受診した。午後3時から急に腹痛が出現して、持続していた。それまでは何ともなく、昼食も普通に食べていた。高血圧症で内科医院に通院していて、一昨年に一過性心房細動で当院の循環器科の外来を受診している。抗不整脈剤を処方されて、内科医院で継続している。

 今週、当院の泌尿器科外来に予約されていた。検査で前立腺癌のマーカーであるPSAが12と高く、精査依頼だった。腹部はけっこう硬く振れた。尿閉でも腹部が緊張して硬く振れることがある。腹部エコーで見ると、膀胱内に尿は貯留しているが量は少なかった。念のため導尿してみたが、180mlの排尿で腹痛はまったく変わりなかった。

 消化性潰瘍の既往はなく、腹部手術の既往もなかった。発症が急というより突発なので、「詰まる・破れる・捻じれる(筑波大学の前野先生)」になる。腹部X線(実際は胸部X線の方が見やすい)で、右横隔膜下に腹腔内遊離ガスfree airがあった。腎機能正常域を確認して、腹部造影CTを行うと、上腹部に腹腔内遊離ガスと腹水貯留を認めた。胃の噴門部に胃癌と判断される腫瘤を認めた。食道にも浸潤しているようだ。CEAが40と上昇していた。CTでみえる範囲では胃の他の部位や十二指腸球部には異常を指摘できない。胃癌(噴門部癌)の穿孔になるのだろうか。

 腹部所見は(CTで確認してから言うのもなんだが)要するに板状硬だった。外科の当番の先生に連絡して来てもらった。胃癌の穿孔による急性腹膜炎で緊急手術となった。二人目の外科医と麻酔科医も招集されていた。

 困ったことに、この患者さんは汎血球減少症もあった。一昨年の一過性心房細動での受診時にも、白血球減少と血小板減少(つまり2系統血球減少)があったが、貧血がなかったので、そこは問題にされていなかったようだ。肝硬変はないので、骨髄の問題だろう。

 (ここから修正) 手術の所見について、後で手術した外科医に伺うと、胃癌の部位に穿孔はなかった。直腸指診で前立腺を触れた時に、直腸に腫瘤が触れていた。指で触れる部位でもあり、穿孔部位とは考えていなかったが、実際は直腸の通貨障害があり(便通は毎日あるが、出にくいことは自覚していた。胃に穿孔がないことから直腸を調べたところ、こちらに穿孔があったそうだ。腸の穿孔ではもっとひどいショックになりませんがと訊いてみたが、便がすぐに穿孔部位を覆ったためだろうと言っていた。

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