昨日、施設入所の80歳女性が食欲不振が続くと、救急搬入された。といっても、ご本人は認知症で、病院受診を拒否していた、何かされることをぜんぶ拒否してしまうようだ。息子の嫁の依頼だった。救急隊員から、「血圧測定も拒否しています。搬入も拒否しています」と連絡が入った。
そうとう暴れているのかと思ったが、搬入されると痩せた老女で暴れるような人ではなかった。ただ、確かに何かをしようとすると全部「いやです。やめて下さい」と拒否してしまう。救急隊員は本人の言うことを尊重して、引き下がったらしい。看護師さんが、これをやってみましょう、これもやってきましょうと声掛けをしながら、結局必要なことは全部やった。
この方は2年前に右上葉肺癌の手術を受けていた。お嫁さんから、息子さんに電話してもらって訊くと、手術はしたが、術後の化学療法は認知症があるということと年齢を考慮してしませんと言われたそうだ。わさわざ肺癌で定評のある東京の大学病院で手術を受けている。術後のフォローはなかったようだ。
胸部X線・CTで肺の半分が隠れるような左胸水貯留があった。炎症反応は陰性。発熱はある。胸水を検査に出すために、胸腔穿刺を行い、そのまま自然留置で900mlの胸水を引いた。淡血性を想定していたが、血性ではなく黄色の胸水だった。細胞診・細菌検査(結核菌を含む)・生化学検査をオーダーした。CEAが95ng/mlと上昇していて、癌性胸膜炎が疑われた。
今日、胸水細胞診の結果が出て、腺癌陽性だった。CTで手術をした右肺の肺尖部に胸膜肥厚があり、術後の変化なのか局所再発なのかわからない。胸腹部CTで明らかな原発巣は指摘できない(痩せていて腹部は読影しにくい)。
入院後は解熱して、食事も少しずつ食べていた。案外病院に馴染んでいる。どこまで治療するかだが、最期まで入院することになるだろうか。