先週末の土曜に日直で病院に来ると、金曜日の当直医だった外科医が、早朝に上腹部痛で受診した63歳男性の検査をしていた。4年前に、慢性C型肝炎でインターフェロン治療を受けていた。治療したのは地域の基幹病院消化器内科の肝臓専門医だった。先週、当院の消化器科の外来を胸やけなどの症状で受診していた。
血液検査で中等度の肝機能障害があり、上部消化管内視鏡検査で胃静脈瘤を指摘された。今週は外注検査の確認と腹部エコー検査が予定されていた。普通は腹部エコーと内視鏡は同日に行うが、経済的な問題(お金がない)で検査が小分けにしてもらったらしい。
外注検査の結果は出ていて、PIVKA-Ⅱが著増していた(院内で測定できるAFPは正常域)。HCV・RNAは検出されずで、抗ウイルス療法は成功していた。その後もフォローを受けていれば、早い時期のHCCを治療できたかもしれない(通院をやめたのだろう)。
外科医が腹部造影CTを行って、肝臓右葉に腫瘍(肝細胞癌)が認められた。入院になるのかと思ったが、患者さんが(経済的に)入院できないというので、鎮痛薬を処方して、その日は帰宅になっていた。
昨日、消化器科医と肝疾患を専門にしている外科医がCT画像をみて相談していた。門脈本幹に腫瘍塞栓があり、右葉全体に腫瘍が広がっていて、治療は困難だろうという。患者さんに希望を訊いて、インターフェロン治療をした病院(肝臓専門医がいる)に紹介する方針となった。治療の仕様がなければ、そのまま戻されるかもしれない。何か治療できるのだろうか。
今年、2人のC型慢性肝炎の患者さんを、その病院の肝臓専門医に紹介した。ひとりはほとんど予約日に来れない中年男性で、10年前からインターフェロン治療を勧めていた。時間がないとずっと断っていたが、結局インターフェロンフリーの時代になって、DAA2剤で治療を受けることになった。これは結果的にはラッキーだったのだろう。もうひとりは70歳代女性で、以前インターフェロン治療を受けて不成功だった。年金暮らしなので高額な治療は受けたくないと言われたが、助成があるのでと説得して紹介した。こちらもDAAでの治療が開始されたそうだ。以前インターフェロン治療の手間と副作用で苦しんだのは何だったのだろう。いい時代になったものだ。