なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

内科学会生涯教育講演会

2016年10月24日 | Weblog

 日曜日は、内科学会障害教育講演会Bセッションに出ていた。約30分の講義が9つなので、そのうち3つくらい参考になる講演があればというところだ。

 「心不全」  心不全による死亡は7万人/年で肺癌と同じくらい。65歳以上の10%以上で心不全を認めるので、今後爆発的に増加する見込みという。重症心不全(NYNA Ⅳ)では年間死亡が50~60%。EF50%以上の心不全HFrEF(ヘフレフheart failure with reduced ejection fraction)より、EF40%以下のHFpEF(ヘフペフheart failure with preserved ejection fraction)の方が多い。HFrEFとHFpEFで生命予後に差はない。二次元スペックルトレッキング法で、HFpEFでは健常者に比べて、global longitudinal strain(GLS)が低下していて、EFで判定できない心筋障害を評価できるそうだ。

 HFrEFの治療はACE阻害薬またはARB・β遮断薬にアルドステロン拮抗薬・利尿薬を加えて治療するが、HFpEFは有効な治療法が確立されていない。β遮断薬は同じクラスならどれでも同じではなくて、カルベジロール(アーチスト)とビソプロロール(メインテート)のみ(それも心不全としての用量になるのだろう)。一方ACE阻害薬やARBは、クラスエフェクトであり、どれでも同じ効果がある。新規の心不全治療薬としては、Ifチャネル阻害薬Ivabradine(洞結節の心拍数を低下させる)、ARB・ネプリライシン阻害薬LCZ606(心房利尿ペプチドが増加)がある。

 アルブミン尿は心不全予後不良因子で、心不全患者では糸球体障害のみならず、尿細管障害も高率に合併しており、両者を合併する心不全は著しく予後不良となる(心腎連関)。また心不全に、睡眠時無呼吸や反省閉塞性肺疾患を合併すると予後不良となる(心肺連関)。非薬物療法として、左脚ブロックなど心室同期不全のHFrEFに心臓再同期療法(CRT)(劇的に改善する症例、30~40%に無効例)と、睡眠時呼吸障害にAdaptive servo ventilation(ASVがある。

 心不全の急性増悪(入院)の要因(患者側)として、塩分水分制限の不徹底、治療薬服用の不徹底がある。β遮断薬を降圧薬と思って休薬させるなど、他の科に医師の理解不足で悪化することもある。

 「降圧療法」  高血圧症の治療目標は達成率は、男性30%女性40%で、未達成では心血管イベントリスクは抑制されない。血圧=血流×血管抵抗で、高血圧を、血流増加型か血管抵抗増加型か判断して、それに見合った降圧薬を選ぶ。

 塩分過多では、昼間だけで排泄できず、夜間まで血圧を上げる。 夜間高血圧は血流増加型の高血圧で、降圧利尿薬による塩分排泄塩分摂取制限が降圧に有効。血管リモデリングが起こると、血管抵抗が増加して、血圧の変動が大きくなる。血圧変動増加は血管抵抗型の高血圧で、血管拡張作用のある降圧薬を使用する。それぞれ逆の降圧薬を選択すると、降圧効果が減弱して、副作用が表れる。

 糖尿病の昇圧機序はインスリン抵抗性で、塩分貯留による血流増加と血管リモデリングによる血管抵抗増大をきたす。糖尿病合併高血圧症では、血流増加型(初期から)と血管抵抗増加型(中期以降)の二つの病態が混在する。RA系阻害薬(ACE阻害薬・ARB)を初期から使用して、第二選択としては初期には利尿薬、中期~後期にはCa拮抗薬などの血管拡張型降圧薬を使用する。

 β遮断薬は、心不全リスクを低下させるが、脳卒中にリスクについては、60歳未満では低下させるが60歳以上では増加させるため、降圧薬の第一選択から外された。降圧薬はアドヒアランスが重要で、飲まなければ血圧下がらない。

「COPD」 COPDでは、末梢気道病変(細気管支)により気道抵抗の増大と気腫性病変(肺胞破壊)が起きている。両者により肺過膨張が生じる(気腫化は静的な=安静時の、気道抵抗は動的な=労作時の過膨張をもたらす)。呼吸機能低下は身体活動性の低下につながる。

 LAMA、LABAの使用でそれぞれ1秒量FEV1.0が150ml増加して、併用すると250ml増加する。肺容量が低下して、運動能力が25%改善する。身体活動性も増加する。疾患が進行すると、肺胞破壊・気管支壁肥厚・気道分泌物貯留が増加するので、LAMAで進行を抑える。吸入ステロイドは使用してもしなくてもCOPDの増悪は同じ。ACOS(喘息の要素がある)の時に使用する。

 慢性疾患で通院中の患者さんの中に、未診断のCOPDが多い。、スパイロで1秒量(率)の低下があれば8割はCOPD(その他は喘息など)。個人的にも、喘息に比べてCOPDはちゃんと診断・治療していない。

「肺癌」  分子標的治療薬(EGFR変異)や免疫チェックポイント阻害薬の話。整理できてない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 肩と肺 | トップ | 内科学会生涯教育講演会・続き »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事