なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

内科学会生涯教育講演会・続き

2016年10月25日 | Weblog

「悪性リンパ腫」 悪性リンパ腫は成熟リンパ球から発生する造血器腫瘍(幼弱なリンパ球から急性リンパ性白血病、成熟リンパ球から悪性リンパ腫、形質細胞から骨髄腫が発生)。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫(今はB細胞性とT/NK細胞性)に大別される。診断は組織診断なので、とにかく生検が需要。WHO分類では形態(組織診断)のみではなく、遺伝子・表面マーカー・染色体・臨床情報などすべての利用可能な情報で分類する(using all available information. no one gold standard.)。

 (古典的)ホジキンリンパ腫の治療は、限局期はABVD療法4コース+放射線療法(30Gray)、進行期はABVD療法6~8コース。新規治療として、ブレンツキシマブベドチン(抗CD30抗体+モノメチルアウリスタチンE)、抗PD-1抗体ニボルマブ(リンパ腫細胞PD-1リガンドとT細胞PD-1との結合をブロック)がある。20歳代と60歳代発症のピークがあり、若年者では二次発癌(25年で27.7%)などの晩期毒性の軽減が重要。

 非ホジキンリンパ腫の治療は、抗CD20キメラモノクローナル抗体リツキシマブが有用。濾胞性リンパ腫は経過が緩徐(年単位)で疾患との共存をはかる。無治療経過観察かリツキシマブ単剤かリツキシマブ併用化学療法。びまん性大細胞性B細胞リンパ腫は最も頻度が高い(30~40%)。リツキシマブ併用CHOP療法(R-CHOP療法)が標準療法で(実施可能な状態であれば)約50%は治癒可能。活性化B細胞由来(予後不良)と胚中心性B細胞由来に大別され、前者にはブルトン型チロシンーゼ阻害薬イブルチニブ、免疫調整薬レナリドミドが開発中。

白血病」 発生頻度は、急性骨髄性白血病(AML)が50%、慢性骨髄性白血病(CML)が20%、急性リンパ性白血病(ALL)が20%、慢性リンパ性白血病(CLL)が10%。経過から、無治療で週の単位で急速に進行する「急性」と年の単位で緩徐に進行する「慢性」に、腫瘍化する細胞の種類から、骨髄球系の「骨髄性」とリンパ球系の「リンパ性」に分類。腫瘍細胞の起源からは、CMLは造血幹細胞由来、AMLとALLは造血前駆細胞由来(骨髄球系とリンパ球系)、CLLは成熟リンパ球由来。(リンパ球系は前駆細胞の段階で骨髄を出てから成熟して、骨髄球系は骨髄内で成熟してから骨髄を出る

 CMLは遺伝子転座で形成されるBCL-ABLが生じて発生する。CML慢性期の第一選択はABLチロシンキナーゼ阻害薬のimatinib、nilotinib、dasatinib。腫瘍細胞量を著減できれば20~40%はABL阻害薬を中止(治癒)できる。AMLは完全緩解率70~80%、5年生存率30~40%で治癒が期待できる。(化学療法からの回復で、白血病細胞の増殖よりも正常細胞の増殖が勝るため、しだいに白血病細胞細胞を減少させることができる

 成人T細胞白血病/リンパ腫ATLLは、HTLV-1キャリアの5%が発症(生涯発症率)。母乳・精液のリンパ球で感染。リンパ腫型・急性型(aggressive type)に多剤併用化学療法。抗CCR-4抗体mogamulizumabは化学療法抵抗例に効果あり。同種造血幹細胞移植で長期生存例も。

「腎と多臓器相関」 8人に1人は慢性腎臓病(CKD)で、75歳以上ではほとんどがCKD相当。CKDは死亡リスク、心血管イベントリスク、入院リスクを高める。透析に至る疾患として、第1位の糖尿病腎症は頭打ち~若干減少、第2位の慢性糸球体腎炎は減少。腎硬化症(原因は高血圧症、加齢)は増加してきて、いずれ第2位になる。日本の維持透析療法の治療成績は世界トップ。透析の最大死因は心不全。

 腎臓はレニンで血圧維持に、エリスロポエチンで貧血に、ビタミンD活性化で骨に関与している。また腎臓はリンの調節臓器で、リン負荷により、血管石灰化から虚血性心疾患・脳血管障害を、心臓弁石灰化から心不全をきたす。線維芽細胞成長因子23(Fibroblast Growth Facter23:FGF23)が生命予後の指標になる。CKDに対するたんぱく制限食はそのままリン制限食であった。(卵白は唯一リンを含まないたんぱく) 腎性貧血でエリスロポエチン正常域は、貧血に対応して増加していないので、異常。

「新興感染症」 新興感染症は1970年以降に新しく認識された感染症。森林開発・動物との濃厚な接触・人口密度の増加・国際的な梗塞大量移動から、局地的な感染症にとどまらず世界的に流行する可能性がある。国際的な旅行者は年10億人。日本人の出国は年1600万人、訪日外国人は1900万人(中国人34%、韓国人20%)。1997年の鳥インフルエンザ(H5N1)、2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年の中東呼吸器症候群(MERS)、2013年の鳥インフルエンザ(H7N9)など。

 鳥インフルエンザ(H5N1)は800人以上が感染して致死率約50%m、鳥インフルエンザ(H7N9)は約800人が感染して致死率約40%。ヒトへの感染はあまり起こらず、ヒトからヒトの感染がないことから終息へ。中東呼吸器症候群(MERS)、中東のアラビア半島(主にサウジアラビア)で流行。MERSコロナウイルス(MERS-CoV)でコウモリからヒトコブラクダを介してヒトへ感染。重篤でワクチンも治療薬もない。MERSのR0(アールノート、基礎再生産数)は0.60~0.69と高くない点ではパンデミックの可能性は低いが、スーパースプレディング現象(1人の患者から多くの感染が起こる現象)も観察され、局地的なアウトブレイクの可能性は高い。

「サルコペニア・フレイル」 加齢とともにしだいに骨格筋量と筋力が低下する。極端に筋肉量・筋力が低下するとサルコペニアと診断され、ふらつき・転倒につながる。フレイルfrailty(加齢に伴う症候群=老年症候群)は、多臓器の生理的機能低下・身体機能低下した状態で、要介護状態に至る前段階。1)体重減少(半年で2~3Kg)、2)疲労感(2週間)、3)活動量低下(1週間以上運動してない)、4)緩慢さ(歩行速度低下0.8~1m/秒以下、5)虚弱(握力低下男性26Kg、助成18Kg以下。ペットボトルのフタが開けられない)、の5項目のうち3つ以上当てはまればフレイルと診断。

 タンパク同化は必須アミノ酸が促進する。高齢者のタンパク推奨量は1g/Kg体重/日。アミノ酸が閾値以上にならないと、タンパク質は合成されない。高齢者は閾値が上がっている。運動すると閾値が下がる(合成されやすくなる)。

 

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