なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

巨細胞性動脈炎でしょう

2016年10月29日 | Weblog

 巨細胞性動脈炎疑い78歳女性のその後(10月19日記載)。

 先々週、発熱と咳で入院した。軽度の肺炎あるいは尿路感染症疑いだった。咳と喘鳴もあったので、気道感染はあったはずだが、肺のわずかな陰影は陳旧性のもののようだ(これまでも感冒罹患時に喘鳴があったそうだ)。尿混濁が改善しても、発熱・炎症反応はまったく変わらず、急性腎盂腎炎ではない(膀胱炎程度)と判断した。入院後の最初の検査で炎症反応が抗菌薬で若干改善したと思ったが、結局誤差範囲で不変だった。

 入院後に頭痛の訴えが続き、てっきり慢性頭痛と思っていた。アセトアミノフェンはまったく効かず、雰囲気から?心因性だと思って、安定剤を処方したりした。よくよく話を聞くと、1か月以内の最近の頭痛ということだった。左側頭動脈に圧痛があり(右にはない)、拍動も弱いように感じられる。急に巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)疑いになった。

 ただ話を聞くたびに、頭痛の発症が数年前~1か月以内~入院してから?と変化する。最近視力が低下してと言われたので、プレドニン投与を開始してしまったが、もともと眼科にかかっていて、急性の症状ではないらしい。抗菌薬なしで、プレドニンだけで1週間経過をみて判断することにした。血沈を検査すると、100mm/時以上と高値だった。

 プレドニン30mg/日で1週間経過をみると、解熱して頭痛を訴えなくなった。本当に側頭動脈の圧痛があるとしていいか自信なかったが、それも軽快した。食事をとる(咀嚼)のが楽になったという。投与前にしつこく顎跛行の有無を訊いてもないとは言っていたが、こうなるとあったと判断したくなる。表情も明るくなり、動きもよくなった(リウマチ性多発筋痛症併発はないと判断していたが?)。正しくは側頭動脈生検だが、なしで経過をみることにした。プレドニンを一定期間維持して、後は漸減する。

 この方はもともと糖尿病があり(DPP4阻害薬とSU薬少量でHbA1c6.8%)、ステロイド糖尿病が加わって悪化してしまった。インスリン強化療法を開始して、現在インスリン量の調整中だ。この方は親族がいることはいるらしいが、折り合いが悪く疎遠だった。入所している施設が生活のすべてだった。

 インスリン注射は自分ではできないので、施設職員に頼むしかないが、看護師さんが常に常駐している施設ではない。看護師常駐の違う施設に依頼するしかないかと思われた。ところが、この方は以前インスリン治療歴があり、施設で介助して行っていたそうだ。インスリンの単位を合わせて、患者さんに持たせる。それをお腹に当てて、注入ボタンを押しこむのは患者さんだが、それもちょっと介助するらしい。なんだかギリギリの「自己注射」だった。今回は強化療法で注射回数が多いので、頼めるかどうか訊いてみないとわからないが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする