Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

新橋演舞場『朧の森に棲む鬼~Lord of the Lies~』4回目 3等A席前方上手寄り

2007年01月26日 | 演劇
新橋演舞場『朧の森に棲む鬼~Lord of the Lies~』4回目 3等A席前方上手寄り

1月26日ソワレ観劇:

前楽です。正直、自分のハマりっぷりが怖い。どうしてここまで浸れてしまうのだろうと自分でも不思議。いい加減、どこか飽きるところがあってもいいと思うのですが全然飽きないで観ています。それどころかますますどっぷり浸かってしまう。劇団☆新感線の芝居で、こんなこと初めてです。今までの劇団のテイストは失ってないけど無駄なところが少ない芝居ってことなんでしょうね。そこが「いのうえ歌舞伎 第二章」なんだろうな。

今回は初日観劇と同様3等A席でしたが伝わってくるパワーが初日と全然違う。ここまでパワーアップしたのかと驚きました。役者さんたちの「気」がもう凄くて圧倒させられっぱなし。役者さんたちの体力は結構ぎりぎりな感じで、主要な役者全員が声が枯れていているわ(サダヲちゃん、秋山さんまでやられてたのにはビックリ)、最低1回は台詞を噛んだり間違っていたり、動きも疲れがみえるところがあったりだったりしたんですが伝えようとする気迫のほうが勝り、芝居の濃度はかなり高かったです。なにかが役者さんたちに憑いちゃってる感じで、「命掛け」という言葉すら浮かんできてしまったくらい。

ライ@市川染五郎、どんどん悪役ぶりがパワーアップ。徹底して情をみせないどころか、人を陥れて楽しそうな笑い声を放つ。外道と言われこれが本道だと言い放つ、その非情な高らかな叫び。ここまでやってくれるか、と。こうなったらとことんいっちゃってくださいと言うしかない。そして悪の毒々しいオーラが濃くなって色気がだだ漏れ。上り詰めていく過程で少しづつ色気のあり方が違うんですよねえ。なんというか少しづつゆらゆらと揺れる妖しいオーラが濃くなっていくんですよ。そして追い詰められて始めてからは、狂気のゆがんだオーラで満たされ妖艶としかいいようがない色気。ゆがんでるのに美しいんですよ。なんでしょうねえ、これ。それにしても狂気への入り込み方がちょっと凄すぎて怖いくらい。壮絶なラストが胸が痛いくらいに哀れで切ない。決して感情移入はできないのだけど魅せられていってしまう。だから、入り込めないんだけど、ライという人物から離れることなく、一緒にラストまで突き進んでしまう感覚に陥る。

にしても小汚い格好の時も少しばかりどこか色ぽくなってきていたような。まだ艶のある色気じゃないんだけど、なんだろな?普通のどこにでもいそうな兄ちゃん的小悪党なんだけど、どこか捕まえどころのない色気があって。今回、なぜかキンタの頬を両手で挟むとこなんてキスしちゃうかと思った(笑)ライって人がして欲しいことを直感的に出来るタイプなんだろうなと。キンタみたいな子はスキンシップが大好きだと思うのよね。そういうとこさりげなくやってあげちゃうんだろう。だからこそキンタはライ兄貴に憧れて惚れてたんだよなあ、というのがよくわかる。心酔していただけに裏切りが心の底から許せない。でも他の人間にやられても欲しくなかったんだろう。だからライを殺そうとしたショウゲンとダザイを躊躇なく殺せるし、ほんとはマダレとツナにもライを殺して欲しくなかったんじゃないかな。自分の手で殺したかったに違いない。でもそれは出来ないとも判っていたはず。ライはライ自身が望まない限り、本当の意味で死ぬことはない。追いかけようとしたマダレとツナを「もう生きてねえ」と止めたのは実はライが朧の森で命を絶つだろうと感じたからじゃないかと。キンタだけ最後の最後までライの気配をずーっと追いかけているんだよね。口では死にたくないと言うライの心の奥底を見たんじゃないのかと。生への執着も本物だったろうけど、終わらせたくもあった。じゃなければ、朧の森の奥に彷徨い出て自分の血を流させることはしない。朧の森に生き血を捧げに行ったようなものだ。「真っ赤な嘘に染め上げろ」という言葉はライの人間であったものの最後の意地。ううっ、やっぱ切ない。こんなアホな事を考える自分も切ない(笑)どこまでこの芝居にハマってるんだと。

憑いていたといえば、シキブ@高田聖子さんもちょっとどうしたの?っていうくらい凄かった。お笑い部分のテンションの高さはいつも通りで声を嗄らしてるのが痛々しいくらいだったんだけど、途中からなにかが違ってました。ライに魅入られちゃている様がどうにもこうにもいつも以上に「女」で。いつもだとオオキミの言葉に揺れてまだ気持ちが残ってる風な部分もありながらライへの気持ちが勝る、って感じだったのだけどこの日、ライしか目に入ってませんでしたよ。どうしようもなくライに魅入られ抜け殻状態。ライの言うがままって雰囲気だった。どこかスコンと魔のなかに入ってしまった感じがしました。<この日観劇の時だけ感じました。聖子さん、テンションMAXだったのかも。

ツナ@秋山菜津子さん、この方も後半、いつも以上に「女」が見えました。特に牢屋のシーン。たぶん、体力的に疲弊してたぽいのも影響してたかもしれないんですが、ライになぶられるとこでの崩れようが、ほんとに崩れていってしまいそうな弱さが出てて、それがかなり色ぽくて、ライとツナの絡みがかなりエロかったです。

マダレ@古田新太さんは後半、ツナにかなり弱々しさがあったせいもあり、ライと反目するところから骨太さが際立ってかなりかっこよかった。古田さんの低音での台詞廻しに迫力が増してて大きな存在感。しかし前半のライとの関係はまだ模索最中な感じもあるなあ。わりとマジメな場での台詞を少しいじってるんだよね。あそこはトチリじゃないと思うんだよな。そういえば古田さん、活舌がかなり良くなったなあ。前はあんまりいいとは言えなかったと思うんだけど。努力されてるでしょうね。

キンタ@阿部サダヲさん、もう安定してて大きな変化はないけど、ライとのスキンシップ、アイコンタクトが増えててそこがまたいじらしくて良い感じです。あと少し遊びはじめてますね。あんまり暴走しないようにしてほしいかな。飛び道具にはなってほしくない。キンタという枠に収まっていてください。

シュテン@真木よう子さん、初日周辺から比べたらかなり成長はしてると思います。台詞回しに情感が少しだけだけど乗ってきたし。でもまだまだキャラに膨らみを持たせるまでにはいってないかなあ。個人的に牢屋のとこでもっとライを追い詰めてほしい。憎しみの激しさ、みたいのが出るとかなりよくなると思うだけど。まあ、シュテンは書き込みが薄いのでキャラ立ちするのが難しいだろうけど。あとライとの関係性が薄いちゃ薄いしね。牢屋シーンでもっとぼろぼろな状態にさせておいてはどうかしら?脚本的にライはすでにシュテンはものにしちゃってると思うのよね。戦利品なんだからほっとくわけない。でもそういうのが全然見えない。首領としてのプライド+女のプライドを傷つけられた、くらいの憎しみが描きこまれてるとシュテンのキャラが活きるのではとか。こんなこと考えるの非道かしらん。

演出面をいうと一幕目、ライとキンタの密接度が高くなっていました。スキンシップやアイコンタクトの回数が増えていて、仲良し度UP。気心が知れている関係にしかみえないから後半がますます活きてくる。二幕目は血糊の量が増えてきてました。「血」の毒々しさがライの狂気と相まって、やはり効果が増してました。特にラストのキンタとの立ち回りの時に目から血が流れているような血糊が付くんですが、これがほんとに傷ついてしまったかとドキッとするほど効果的で。

遊びもだいぶ出てきてて、でもうるさいほどじゃなくかなり可笑しかった。日ネタも飛ばしてましたね。印象に残ったのを。

<ライがツナ宛の手紙を読むシーン>
「飛ばせ」と言ってるのにライが少ししか飛ばさないからキンタがちょっかい出してツナに殴られ、キンタが殴られたほっぺを突き出して
キンタ:「ほらあ、飛ばさないからこうなる」(いつもよりアクション大きい)
ライ:「あっ?そう?飛ばしたよ」(ぼそっと呟く。いつから返事をかえすようになったんだ。20日にはなかった)
キンタ「あっ?そうって言ったよ、この人」続けようとするサダヲちゃんだが
ツナ:「キンタ!」
キンタ:「おぁ?キンタ?俺のことか…」
この時キンタ、素で笑ってしまい、ライもつられて半笑い。
ツナ:「キンタ、お前が悪い」ライに向かって「続けて」
秋山さん、ナイスフォローでした(笑)

<ウラベとサダミツがはけていく時の会話>
ウラベ:「今日は巫女の占いを聞きに行かないか」
サダミツ「占いかぁ」
ウラベ「そうだ」
サダミツ「何を聞くんだ?」
ウラベ:「結婚運♪」
サダミツ:「やめとけ~~!!聞いた後に後悔するぞ」


<マダレをオクマちゃんが紹介する場>
オクマ「えっーと、えーっと、……、誰?」
マダレ「マダレだ!!」いつもより怒りまくってました(笑)
今まで見たなかで一番受けてた。

2 コメント

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ライ&キンタ (ぃよっす)
2007-01-30 22:47:22
おっ、雪樹さんが日ネタを感想に上げるとは珍しいですね(笑)。恐らく、その辺も含めて今回はドップリ浸かってしまっているのでは?いーじゃないですかぁ!心ゆくまで彷徨い続けましょう!
あ、私もライがキンタの頬を挟んだとき、このままチューしてもおかしくないなぁ…と思いました(笑)!そんな訳で24日ソワレではライ&キンタにちょい萌ぇしました…(照)。
キンタがライに「オレは生きて兄貴に剣を向ける!」と斬り掛かった時に、立ち回り中に「やぁ!!」と気合いの声を放つんですよね。(これ、後半になってから気付いたんですけど。)あれを聞くと凄く切なくなる。キンタは最後には兄貴を自分の手で倒したいと願いつつ、やっぱり斬れないんじゃないかと思ってるんじゃないかな、、、と。
て、語ってないで自分の感想上げろよ(笑)!<自己ツッコミ。
失礼しました~~。千穐楽の感想も楽しみにしてます♪
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ライ×キンタ(笑 (雪樹)
2007-02-02 12:06:07
そうなんです、珍しいでしょ<日ネタ。基本的に日ネタには興味ないのですよ(笑)複数回観ない人のほうが多いんだし必要ないもの、と切り捨ててます。練られたネタのほうが好きということもあるし。

ライがキンタの頬を挟んだとこ、後半になって妙に印象的になったような気がする。ライとキンタの密着度が高くなってるでいですね。私はライ×キンタは兄弟に近いよなあと思っているんです。

キンタの「生きて~」の言葉、深いと思うんですよね。色々解釈できて楽しい。
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