東京オペラシティ・コンサートホール『ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル』 B席3階RA3扉
3年ぶりのエマール氏のリサイタル。この方のテクニックと音色の多彩に惚れこんでおりまして今回もすごーく楽しみにしておりました。現代音楽の旗手と言われるエマール氏、私の現代音楽への苦手意識を取っ払ってくれたピアニストの一人。また、モーツァルトの演奏では透明感溢れる繊細で優しく可愛らしい音色での演奏ぶりで実に幅の広い演奏家であるというところにも目を瞠らされたのです。
今回は現代音楽中心ではなくカーターとメシアンを間に入れつつ古典の難曲と言われているバッハ『フーガの技法』とベートーヴェンの晩年のピアノ・ソナタ『ピアノ・ソナタ第31番』を入れたプログラム。
で、ですね、まず素直な感想として「や~ら~れ~た~!」という感じです。なにがって、想像していた演奏と違ってたんです。なんじゃ、こりゃ~!なわけで…。なんていうの?古典のつもりしてたら全部コンテンポラリーだったというか。今回はピエール=ロラン・エマール俺様コンサートでした(笑)解釈がね、とっても独特なんです。つらつらと思い返すに凄い演奏を聴いてしまった気になっております。咀嚼するのに時間が掛かったということかもしれない。
バッハなんだけどバッハじゃない、ベートーヴェンなんだけどベートーヴェンじゃない。バッハが、ベートーヴェンが、現代音楽に聴こえるの。なんですか?これは?ある意味破壊して再構築してみましたな感じ。作曲家の精神性とは違う部分でその曲の「事象」を提示してました。これに気がついたのは後半の演奏になってから、という情けなさ(笑)凄まじいテクニックに裏打ちされているので、かえってそれに気がつかない。だってきちんとバッハでベートーヴェンなんだもの。でも違うんですよ。カーターとメシアンと同列なの。普通、そこを同じに置かないでしょ?根っこは同じ、という発想での演奏会でした。
前半はあれ?なんか調子悪い?肩に力入りすぎ?とか思ったんです。バッハに柔らかさがまったくないの。素が剥き出しになった音が連なり曲の構造そのままが提示されちゃう感じ。でもその代わりカーターやメシアンが少しばかりクラシカルな叙情が含まれる。音の面白さ、曲想の面白さが色彩とともに浮いてくる。あら、エマール氏はやっぱ現代音楽のほうが良い人なのか、なんて感じで。でも後半になって、「あっ、違う」ってわかりました。後半のバッハとベートーヴェンが凄まじかった。へたすりゃおいてきぼりになりそうなぐらいの勢いの演奏。曲想に浸る暇なんてないです。曲そのものを剥き出しにした感じというか、その曲の「事象」がそこにあるって思わせるようなそんな演奏。あ、これはコンテンポラリーだってようやくわかりました。精密すぎてクラシカルな叙情に流されないの。ちゃんとバッハでベートーヴェン、でも違う(笑)とにかく「面白い演奏会」でした。
そしてアンコール曲がまたすごいんですよ。カーターとメシアンを計6曲。これを楽しく面白く聴かせちゃう。たぶん、エマール氏、してやったりだったと思う。現代音楽って面白いでしょ、バッハ~ベートーヴェンから脈々と続く音楽のひとつなんだよ、って一つの演奏会で見せちゃった。
それにしても音出し自体が3年前の時は曲想によって変化させていたのに、今回はすべて同じ音色で弾ききりましたよ(^^;)ピエール=ロラン・エマール氏の音色の豊かさバリエーションの多彩さを知らない人が聞いたら、同じ音色の人って認識されちゃうよ…。いや、それでもかなり多彩でしたけどね。この方が弾くと、色がぽんぽんと曲に付いていくんですよ。
力強さと色彩がみえる華やかさと硬質さ、一音づつの明快さと流れるようなタッチ。すんごい複雑で早いテンポの曲を軽々と弾いてしまう。ミスタッチが一個もないんですよ。とんでもないテクニック。だからこそ、現代音楽を楽しく面白く聴かせられるんだろうなとつくづく思いました。
ああ、しかしこれクラシック音楽素人にはオススメできない演奏会でもあったかも(笑)素人な私はあやうく「…」で終わったかもしれない危険性大だった。でも3年前のコンサートがあったから、あの音色を聴いていたから、なんとなく意図を感じ取れたような気がする。ハードル高かった。
【曲目】
J.S.バッハ:フーガの技法 BWV 1080から
コントラプンクトゥスI/3度の対位における10度のカノン
カーター:2つのダイヴァージョン
J.S.バッハ:フーガの技法 BWV 1080から
5度の対位における12度のカノン
反進行における拡大カノン
メシアン:「8つの前奏曲」から
第2曲 悲しい風景の中の恍惚の歌
第5曲 夢の中の触れ得ない音
第8曲 風の中の反射光
*******
J.S.バッハ:フーガの技法 BWV 1080から
コントラプンクトゥスX/コントラプンクトゥスXII.1
コントラプンクトゥスXI/コントラプンクトゥスXII.2
コントラプンクトゥスIX(12度における)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 op.110
【アンコール曲】
カーター:カテネール(日本初演)
メシアン:「8つの前奏曲」から 鳩
メシアン:「4つのリズムの練習曲」から 火の島第1、第2
カーター:マトリビュート
メシアン:静かな訴え
3年ぶりのエマール氏のリサイタル。この方のテクニックと音色の多彩に惚れこんでおりまして今回もすごーく楽しみにしておりました。現代音楽の旗手と言われるエマール氏、私の現代音楽への苦手意識を取っ払ってくれたピアニストの一人。また、モーツァルトの演奏では透明感溢れる繊細で優しく可愛らしい音色での演奏ぶりで実に幅の広い演奏家であるというところにも目を瞠らされたのです。
今回は現代音楽中心ではなくカーターとメシアンを間に入れつつ古典の難曲と言われているバッハ『フーガの技法』とベートーヴェンの晩年のピアノ・ソナタ『ピアノ・ソナタ第31番』を入れたプログラム。
で、ですね、まず素直な感想として「や~ら~れ~た~!」という感じです。なにがって、想像していた演奏と違ってたんです。なんじゃ、こりゃ~!なわけで…。なんていうの?古典のつもりしてたら全部コンテンポラリーだったというか。今回はピエール=ロラン・エマール俺様コンサートでした(笑)解釈がね、とっても独特なんです。つらつらと思い返すに凄い演奏を聴いてしまった気になっております。咀嚼するのに時間が掛かったということかもしれない。
バッハなんだけどバッハじゃない、ベートーヴェンなんだけどベートーヴェンじゃない。バッハが、ベートーヴェンが、現代音楽に聴こえるの。なんですか?これは?ある意味破壊して再構築してみましたな感じ。作曲家の精神性とは違う部分でその曲の「事象」を提示してました。これに気がついたのは後半の演奏になってから、という情けなさ(笑)凄まじいテクニックに裏打ちされているので、かえってそれに気がつかない。だってきちんとバッハでベートーヴェンなんだもの。でも違うんですよ。カーターとメシアンと同列なの。普通、そこを同じに置かないでしょ?根っこは同じ、という発想での演奏会でした。
前半はあれ?なんか調子悪い?肩に力入りすぎ?とか思ったんです。バッハに柔らかさがまったくないの。素が剥き出しになった音が連なり曲の構造そのままが提示されちゃう感じ。でもその代わりカーターやメシアンが少しばかりクラシカルな叙情が含まれる。音の面白さ、曲想の面白さが色彩とともに浮いてくる。あら、エマール氏はやっぱ現代音楽のほうが良い人なのか、なんて感じで。でも後半になって、「あっ、違う」ってわかりました。後半のバッハとベートーヴェンが凄まじかった。へたすりゃおいてきぼりになりそうなぐらいの勢いの演奏。曲想に浸る暇なんてないです。曲そのものを剥き出しにした感じというか、その曲の「事象」がそこにあるって思わせるようなそんな演奏。あ、これはコンテンポラリーだってようやくわかりました。精密すぎてクラシカルな叙情に流されないの。ちゃんとバッハでベートーヴェン、でも違う(笑)とにかく「面白い演奏会」でした。
そしてアンコール曲がまたすごいんですよ。カーターとメシアンを計6曲。これを楽しく面白く聴かせちゃう。たぶん、エマール氏、してやったりだったと思う。現代音楽って面白いでしょ、バッハ~ベートーヴェンから脈々と続く音楽のひとつなんだよ、って一つの演奏会で見せちゃった。
それにしても音出し自体が3年前の時は曲想によって変化させていたのに、今回はすべて同じ音色で弾ききりましたよ(^^;)ピエール=ロラン・エマール氏の音色の豊かさバリエーションの多彩さを知らない人が聞いたら、同じ音色の人って認識されちゃうよ…。いや、それでもかなり多彩でしたけどね。この方が弾くと、色がぽんぽんと曲に付いていくんですよ。
力強さと色彩がみえる華やかさと硬質さ、一音づつの明快さと流れるようなタッチ。すんごい複雑で早いテンポの曲を軽々と弾いてしまう。ミスタッチが一個もないんですよ。とんでもないテクニック。だからこそ、現代音楽を楽しく面白く聴かせられるんだろうなとつくづく思いました。
ああ、しかしこれクラシック音楽素人にはオススメできない演奏会でもあったかも(笑)素人な私はあやうく「…」で終わったかもしれない危険性大だった。でも3年前のコンサートがあったから、あの音色を聴いていたから、なんとなく意図を感じ取れたような気がする。ハードル高かった。
【曲目】
J.S.バッハ:フーガの技法 BWV 1080から
コントラプンクトゥスI/3度の対位における10度のカノン
カーター:2つのダイヴァージョン
J.S.バッハ:フーガの技法 BWV 1080から
5度の対位における12度のカノン
反進行における拡大カノン
メシアン:「8つの前奏曲」から
第2曲 悲しい風景の中の恍惚の歌
第5曲 夢の中の触れ得ない音
第8曲 風の中の反射光
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J.S.バッハ:フーガの技法 BWV 1080から
コントラプンクトゥスX/コントラプンクトゥスXII.1
コントラプンクトゥスXI/コントラプンクトゥスXII.2
コントラプンクトゥスIX(12度における)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 op.110
【アンコール曲】
カーター:カテネール(日本初演)
メシアン:「8つの前奏曲」から 鳩
メシアン:「4つのリズムの練習曲」から 火の島第1、第2
カーター:マトリビュート
メシアン:静かな訴え