Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

国立小劇場『二月文楽公演 第三部』 1等真ん中

2006年02月26日 | 文楽
国立小劇場『二月文楽公演 第三部』 1等真ん中

『天網島時雨炬燵』「河庄の段」「天満紙屋内の段」
近松の「心中天網島」の改作バージョンだそう。「河庄」は歌舞伎で鴈治郎さんで観ていますが後半の話は知らなかった。治兵衛の性格に納得がいきません…。第三部は床が揃っていると聞いていたので楽しみにしていましたが、皆さん迫力があって素晴らしかったです。人形のほうは蓑助さんが格の違いみせた感じ。ラストの心中のリアルさにかなり驚きました。ああいう無様な死に方も見せるですね~。

「河庄の段」
つい最近、鴈治郎さんと雀右衛門さんの歌舞伎で観ているのですんなり話に入れた。しかし治兵衛ってほんとダメ男だよなあ。この話はダメ男に惚れた女の悲劇って感じもする…。

この段はなんといっても住太夫さんの語りが素晴らしかった。個々のキャラクターの心情がストレートに伝わってくるんですよね。それぞれの語り分けが見事で情景が膨らんでくる。でも声質的には時代もののほうがより住太夫さんの魅力が出るような気もしました。前回の寺子屋が印象に残りすぎかも。

紙屋治兵衛@桐竹勘十郎さんはダメ男ぶりがなかなか。憔悴しきった様子など見てて哀れを催す(笑)もう少し柔らかい色気があるといいなあ。

紀の国屋小春@吉田和生さんは楚々して可愛らしい。が、ちょっと色気不足で存在感も足りないような。和生さんは素直なお姫様系は結構、良いなあと思っていたんだけど、こういう役は難しいんですね。

粉屋孫右衛門@吉田玉女さんは実直で優しそうな孫右衛門を細やかに遣っていた感じがしました。


「天満紙屋内の段」
この段での治兵衛の性格がコロコロ変わるのが納得いきません。別の人の手が入った改作のためなんでしょうけど、見ているとこいつ多重人格者か?と思うほどで感情移入できない…。周りの善意を完全に無視して心中に赴く治兵衛と小春の二人に哀れさをまーったく感じない。場面場面では面白かったりするんですが、流れで見ると不可解な気持ちになってしまう。改作じゃないほうが観て見たいです。

この段ではなんといってもおさん@吉田簔助さん。やっぱりこの方が操る人形は凄い。血肉が通っているんですよ。生きてるの。ひとつひとつの表情の細やかさに圧倒させられます。それにしてもおさんは健気すぎる。惚れた弱みでしょうか。こういう尽くす恩ほどでああいうダメ男に惚れちゃうんですよねえ。

この段で気になったのは治兵衛のお末ちゃんの扱い。白い着物に書かれた手紙を読むシーン、いつもあんなに乱暴なんですか?父のために尼さんにさせられたのに、ひどすぎ。

床では豊竹嶋大夫さんの語りと鶴澤清介さんが気に入りました。特に三味線の音がかなり好みです。

★かしまし娘さんの感想。ツッコミが楽しいです。
『2月文楽 国立劇場 天網島時雨炬燵 』