Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

世田谷パブリックシアター『MANSAI◎解体新書/その拾四「ひとがた(人形)」』

2009年02月24日 | 古典芸能その他
世田谷パブリックシアター『MANSAI◎解体新書/その拾四「ひとがた(人形)」~自己と他者のディスタンス~』 3階立見席

野村萬斎さん主催のトークショー『MANSAI◎解体新書/その拾四「ひとがた(人形)」~自己と他者のディスタンス~』を観に行きました。ゲストは文楽人形遣い、桐竹勘十郎さんと『生物と無生物のあいだ』の作者、分子生物学者の福岡伸一さん。立見席で2時間半でしたがとても面白くて、思ったより疲れずに済みました。


●福岡伸一さんの言葉で印象的だったもの
「動的平衡」
「他者があってはじめて、自己を認識」
「自己認識すると死ぬ細胞」
「自分探しをする細胞---ガン細胞、ES細胞」


●人形浄瑠璃の実演
出演者)
主遣い:勘十郎さん
左遣い:勘弥さん
足遣い:紋秀さん
義太夫:咲甫大夫さん
三味線:清介さん 

『義経千本桜渡海屋・大物浦の段』の幽霊知盛のくだり
一、
まずは勘十郎さんも黒子姿で人形にピンスポを当てて。人形がこの演出のため際立つ。ひとつひとつの形がさすがに美しいし躍動感がある。文楽を上から眺めることって無いので、普段見られない角度で見られたのも面白かった。上からのほうが形(この場合、人形のバランス)がよく見える。歌舞伎でも上からのほうが体の置き方が上手いか下手かがわかりやすいのと同じかも。

二、
次になんと人形なしで同じシーンを三人遣いで操る。これがすっごく面白かった。三人のコンビネーションが人形がなくても崩れないんですよねえ。エア人形なのにちゃんと人形がみえてくるんですよ。これは見事だった。三人でひとつ、というのが如実にわかる。しかも20分近くしっかりパフォーマンスとして十分に見られるという事が凄いと思う。これを見ると人形遣いの方がかなり大変なこともよくわかる。

特に足遣いの方は絶えず中腰で、しかも腰を主遣いの腰にピタリと付けていなくてはならない。(主遣いの体の動きが足を動かすタイミングの合図。それを体で感じて動かす)。しかも今回は主遣いが高下駄を履いていないのでいつも以上に腰を屈めてやらないといけなかったはずだ。でもきちんとやってのけた紋秀さんにはただ拍手。

また楽そうと萬斎さんに言われていた左遣いだが、勘十郎さん曰く「かなり神経を使うポジション」とか。糸も繋がっていない状態でも見事に左手の位置を右と対称の位置に置き、タイミングよく左を動かしているのをみて、確かに相当な集中力が必要、というのを感じた。


●人形と萬斎さんのコラボ
『悪七兵衛景清』
これが思った以上に違和感があるのです。そこが面白かった。伝統芸能の動きの基本、「腰を中心に据えて動かさない」は同じなのに動き方が違うんですよね。「能-狂言-歌舞伎-文楽」能は所作が最小限、そこから右にいくつれ動きが大胆に、ただし基本は一緒、というところでしょうか。