日生劇場『十二月歌舞伎公演 昼の部』 1等1階前方上手寄り
『碁盤忠信』
さすがに初日に比べ全体的に随分と締まってた。他愛もない内容を様々な趣向でみせていく流れがスムーズになって見やすくなっていた。とはいえやはり2幕目1場は少々冗長。この場はもっと刈り込んでぽんぽんリズムよく見せて言ったほうが良いと思う。照明ももっと明るくていいと思われ。小車の出のところだけ一瞬暗くすれば、あとは流れで霊だとわかるしね。しかし、小車の出ですっぽんが使えなかったのが痛いね。日生はすっぽん、作れるはずなんですけどねえ。あとこの場での碁盤、碁石はもっと大きいほうが視覚的に派手にしたほうが絶対楽しいと思う。
復活新作ゆえのアラはあるものの楽しい気分にさせてくれる芝居であることは確か。歌舞伎ならではの趣向のオンパレード。音楽も義太夫、大薩摩、常磐津を聞かせるし衣装も華やかでそれぞれのキャラを引き立てる。忠信の衣装は3枚とも柄・色合いともによくて素敵でした。
忠信@染五郎さん、まだ余裕はなさそうで肩に力が入りすぎてる感もありますがだいぶこなれてきていました。そして隈が顔にノッてきていましたねえ、非常に綺麗な顔の拵え。体の線の美しさ形の美しさはいつも思うけどほんとに見事ですし舞踊にはキレがある。荒事特有の動きや台詞はまだ馴染みきれてないけど初日に比べ成長の跡をみせたと思う。今のところ声も保ててるし伸びは少々足りないものの言葉はストレートに立っている。荒事をほとんど演じてこなかったことを考えるとほんとよく頑張っていますねえ。立ち回りも皆とのコンビネーションがよくなったせいもあるのか華やかさが増した。造詣としては真面目さのほうが勝ってます。2幕目以降はもっとおおらかな茶目っ気を出してもいいと思います。
小柴入道浄雲@錦吾さん、今回は役にしっかり入れていたと思います。ちょっととぼけた味わい。悪者ぽくならないのが錦吾さんらしさ。もう少し輪郭太くてもいいかなとは思いますがほどのよい抜け感があって良かったです。
覚範@海老蔵さん、こういう拵えをするとお父様の團十郎さんにソックリですね。改めて見ると動きも似てる。色んな意味で存在感があります。相変わらず台詞がこもって何を言っているのか伝わってこないのが残念です。声は届けど言葉届かず。もう少し工夫していただきたいです。しかし忠信に相対する覚範にあの拵えは解せないし他に覚範らしい出のありようがあると思う…。基本的にこの歌舞伎の世界では忠信が正義の味方、覚範が悪役。それなのに悪役が正義の味方を押し戻すとはこれいかに?しかも押し戻しは普通は人でないものを押し戻すのが普通です。これは海老蔵さんのせいではありませんが…脚本か演出のミスだと思います。
呉葉@笑三郎さん、言い立てを楽しく聞かせる、やっぱり上手いですねえ。
静御前@春猿さん、綺麗なだけでなく色気のある静御前でした。
番場の忠太@猿弥さん、こういう役がすっかり持ち役に。丸い体型と愛嬌のよさでこの三枚目を魅力的に演じます。この手の役での独特の台詞廻しが以前に比べなじんできましたね。
『茨木』
こちらも初日に比べだいぶ密になってきていました。
伯母真柴実は茨木童子@松緑さん、体の使い方がやはり良くなっています。個人的に門外での踊りが一番良いと思います。子への愛情がきちんと見える。また初日には全然なかった鬼の見え隠れが出るようになってきていました。とはいえ宅内はまだまだ丁寧にこなしてます段階かな。でもこの丁寧にがなかなかできないもの。気を抜かずに集中力を切らしません。今の段階でここまで踊りこなすのは大したものです。妖気の部分はやはりまだまだ出し切れていませが大きさが出てきてました。非常に良い出来でしたが残念ながらこの日はどうも声の調子が悪そうでした。そのせいか台詞の抑揚がちょっと安定してなかった。
渡辺源次綱@海老蔵さん、綱は柄にあって全体の佇まいが良いです。また初日は能面のようだった表情に良い表情が出ていました。特に叔母の舞踊を見るとこの表情が柔らかくなっていてそこが個人的に良い変化だなと思いました。手柄語りは語りになりきれてないですね。まだ振りに意味付けしきれてない。綱の見せ場なのに単にバサバサ動いてるだけで面白くなかったです。踊りこみが足りないんでしょう。キメの部分は力強いんですが…。そういう意味で全体的に形のよいところと悪いとこが混在していました。音をもっとしっかり捕まえてほしい。後半は迫力があるのはいいのですが少し押さえたほうが良いと思う。あれでは綱があのまま茨木童子に殺され化け物化した雰囲気…。台詞は初日に比べたらかなり進歩。時に前半は頑張ってた。しかし後半につれて不明瞭に…力みすぎるとああなるのかしら?
太刀持音若@梅丸くん、控えているときの行儀のよさが目を惹きます。そして舞踊がとてもよいです。すっと手足が伸びとても丁寧。梅玉さんのご指導が目に浮かぶようです。
『碁盤忠信』
さすがに初日に比べ全体的に随分と締まってた。他愛もない内容を様々な趣向でみせていく流れがスムーズになって見やすくなっていた。とはいえやはり2幕目1場は少々冗長。この場はもっと刈り込んでぽんぽんリズムよく見せて言ったほうが良いと思う。照明ももっと明るくていいと思われ。小車の出のところだけ一瞬暗くすれば、あとは流れで霊だとわかるしね。しかし、小車の出ですっぽんが使えなかったのが痛いね。日生はすっぽん、作れるはずなんですけどねえ。あとこの場での碁盤、碁石はもっと大きいほうが視覚的に派手にしたほうが絶対楽しいと思う。
復活新作ゆえのアラはあるものの楽しい気分にさせてくれる芝居であることは確か。歌舞伎ならではの趣向のオンパレード。音楽も義太夫、大薩摩、常磐津を聞かせるし衣装も華やかでそれぞれのキャラを引き立てる。忠信の衣装は3枚とも柄・色合いともによくて素敵でした。
忠信@染五郎さん、まだ余裕はなさそうで肩に力が入りすぎてる感もありますがだいぶこなれてきていました。そして隈が顔にノッてきていましたねえ、非常に綺麗な顔の拵え。体の線の美しさ形の美しさはいつも思うけどほんとに見事ですし舞踊にはキレがある。荒事特有の動きや台詞はまだ馴染みきれてないけど初日に比べ成長の跡をみせたと思う。今のところ声も保ててるし伸びは少々足りないものの言葉はストレートに立っている。荒事をほとんど演じてこなかったことを考えるとほんとよく頑張っていますねえ。立ち回りも皆とのコンビネーションがよくなったせいもあるのか華やかさが増した。造詣としては真面目さのほうが勝ってます。2幕目以降はもっとおおらかな茶目っ気を出してもいいと思います。
小柴入道浄雲@錦吾さん、今回は役にしっかり入れていたと思います。ちょっととぼけた味わい。悪者ぽくならないのが錦吾さんらしさ。もう少し輪郭太くてもいいかなとは思いますがほどのよい抜け感があって良かったです。
覚範@海老蔵さん、こういう拵えをするとお父様の團十郎さんにソックリですね。改めて見ると動きも似てる。色んな意味で存在感があります。相変わらず台詞がこもって何を言っているのか伝わってこないのが残念です。声は届けど言葉届かず。もう少し工夫していただきたいです。しかし忠信に相対する覚範にあの拵えは解せないし他に覚範らしい出のありようがあると思う…。基本的にこの歌舞伎の世界では忠信が正義の味方、覚範が悪役。それなのに悪役が正義の味方を押し戻すとはこれいかに?しかも押し戻しは普通は人でないものを押し戻すのが普通です。これは海老蔵さんのせいではありませんが…脚本か演出のミスだと思います。
呉葉@笑三郎さん、言い立てを楽しく聞かせる、やっぱり上手いですねえ。
静御前@春猿さん、綺麗なだけでなく色気のある静御前でした。
番場の忠太@猿弥さん、こういう役がすっかり持ち役に。丸い体型と愛嬌のよさでこの三枚目を魅力的に演じます。この手の役での独特の台詞廻しが以前に比べなじんできましたね。
『茨木』
こちらも初日に比べだいぶ密になってきていました。
伯母真柴実は茨木童子@松緑さん、体の使い方がやはり良くなっています。個人的に門外での踊りが一番良いと思います。子への愛情がきちんと見える。また初日には全然なかった鬼の見え隠れが出るようになってきていました。とはいえ宅内はまだまだ丁寧にこなしてます段階かな。でもこの丁寧にがなかなかできないもの。気を抜かずに集中力を切らしません。今の段階でここまで踊りこなすのは大したものです。妖気の部分はやはりまだまだ出し切れていませが大きさが出てきてました。非常に良い出来でしたが残念ながらこの日はどうも声の調子が悪そうでした。そのせいか台詞の抑揚がちょっと安定してなかった。
渡辺源次綱@海老蔵さん、綱は柄にあって全体の佇まいが良いです。また初日は能面のようだった表情に良い表情が出ていました。特に叔母の舞踊を見るとこの表情が柔らかくなっていてそこが個人的に良い変化だなと思いました。手柄語りは語りになりきれてないですね。まだ振りに意味付けしきれてない。綱の見せ場なのに単にバサバサ動いてるだけで面白くなかったです。踊りこみが足りないんでしょう。キメの部分は力強いんですが…。そういう意味で全体的に形のよいところと悪いとこが混在していました。音をもっとしっかり捕まえてほしい。後半は迫力があるのはいいのですが少し押さえたほうが良いと思う。あれでは綱があのまま茨木童子に殺され化け物化した雰囲気…。台詞は初日に比べたらかなり進歩。時に前半は頑張ってた。しかし後半につれて不明瞭に…力みすぎるとああなるのかしら?
太刀持音若@梅丸くん、控えているときの行儀のよさが目を惹きます。そして舞踊がとてもよいです。すっと手足が伸びとても丁寧。梅玉さんのご指導が目に浮かぶようです。