Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

東京芸術劇場中ホール『ザ・キャラクター』 S席2階中央下手寄り

2010年07月28日 | 演劇
東京芸術劇場中ホール『NODA・MAP15回公演『ザ・キャラクター』マチネ S席2階中央下手寄り

25日(日)に野田地図『ザ・キャラクター』を観ました。感想はまだちょっとまとまらない。今回の芝居は最近の野田地図のなかでは好きなほうで面白かったんですが後半、野田さんが芝居として消化しきれずまんま提示したところで「現実」のほうが勝ってしまって、こちらも消化しきれてなくて…。15年も前のことなのにあの一日のことはほんとに鮮明に覚えてる。乗っていたかもしれない電車のことがどうしても浮かんで、あの日が浮かんでくる。あの日、私は運が良かっただけだった。だから私にとってあまりに近しい事件なのだ。

私なら「忘れないために祈る」だ。「忘れるため」にではない。面白かったし、ここ最近の作品『ロープ』『パイパー』より芝居としても良いと思う。でもあまりにストレートすぎてしんどかった。私はあの日、一文字も書けずに倒れてしまったあの人たちの立場になっていたかも…あの電車の乗っていたかもしれなかったから。今でのあの日のことは鮮明だ。 この芝居は年齢やあの時どこにいたか、あの時どうしていたかでだいぶ受ける印象は変わる芝居かも。

そういう意味では彼らを「幼い」と断罪した野田さんにはこの題材を取り上げてくれてありがとうと思った。私がずっと思っていたことだったから。なんて幼稚な集団なんだろう、それが暴力に結びつくとこうなるんだ、と。

でも、ほんとはそこだけで観ちゃいけないんだろうなとも感じてはいる。野田さんはもっと広い範囲で「幼さ」を描きたかったのだと思う。けど、あまりに事件をそのまま提示しすぎて、その部分の余白をかえって狭めてしまったんじゃないかと思ったり。でもそれは観る側の私の問題でもあるのかなあ。だからラストの言葉、「忘れるために」でいいんだろうか?と思ってしまうのか…う~ん、う~ん。

とりあえず今はここらヘンで思考がうろちょろしてて「芝居」がどうのってとこまで思考がまわらないでいます。


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NODA・MAP15回公演
『ザ・キャラクター』

町の小さな書道教室、そこに立ち現われるギリシア神話の世界、
それが、我々の知っている一つの物語として紡がれていく。
物語全てが、ギリシア神話さながらの、変容(=メタモルフォーゼ)を
モチーフとしたお話になっています。信じていたものが、姿を変え、
変化を遂げていく物語。その最後に立ち現われる、我々が知っている物語とは…。
物語尽くしの物語です。乞うご期待!
                   野田秀樹

作・演出:野田秀樹
美術:堀尾幸男
照明:小川幾雄
衣装:ひびのこずえ
選曲・効果:高都幸男
振付:黒田育世
ヘアメイク:宮森隆行

【キャスト】
マドロミ----------------宮沢りえ
家元--------------------古田新太
会計係・ヘルメス--------藤井隆
ダフネ------------------美波
アルゴス----------------池内博之
アポローン--------------チョウソンハ
新人--------------------田中哲司
オバちゃん--------------銀粉蝶
家元夫人・ヘラ----------野田秀樹
大家・クロノス----------橋爪功