独立行政法人国民生活センター発行 国民生活2021.3より
暮らしの法律Q&A 第105回より (荻谷雅和弁護士回答)
配偶者居住権を取得した場合に相続の内訳はどうなる?
相談
夫が亡くなり、およそ3000万円の自宅と2000万円の預貯金が遺産として残されています。
相続人は私と娘2人です
民法が改正され、配偶者居住権が認められるようになりました。
相続できる内訳はどのようになるのでしょうか。
回答
民法改正により、2020年4月からは、この「配偶者居住権」の制度ができました。
これは、被相続人の配偶者は、被相続人の財産であった建物に相続開始時に居住していた場合において、
次のいずれかの場合には、その居住していた建物を無償で使用できる、という制度です(民法1028条)
1 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき
2 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき
2の場合は、夫が遺言の中で「配偶者居住権を妻に遺贈する」としておく必要があります。
本件は、そうした遺言がなかったものとして説明します。
〇もし制度がないとどうなっていたのか
配偶者と娘が相続人の場合に、相続分の割合は各2分の1です。
遺産は「3000万円の自宅と2000万円の預貯金」ですから合計額は5000万円です。
もし、配偶者が自宅、娘が預貯金という分け方をすると、
配偶者は500万円余分に相続したことになりますから、
バランスをとるためには配偶者から娘へ500万円を支払わなければなりません。
もちろん、預貯金は配偶者にはまったく相続できないことになります。
〇実際の問題として、これではかなりの不都合が発生しかねません。
そこで、創設されたのが、配偶者居住権です。
本件でも、配偶者が遺産分割協議で主張すれば認められる権利です
たとえば、配偶者居住権を建物時価の約半分の価値(=1500万円)と評価すると、
配偶者の自宅に対する遺産分割は1500万円(配偶者居住権分)となり、
娘は配偶者居住権の負担が付いた自宅建物の所有権を取得し、
その価額は(3000万円ー1500万円=)1500万円となります。
法的相続分は、それぞれ2500万円(5000万円×2分の1)になるので、
配偶者は、相続分から配偶者居住権を差し引いた額の預貯金を取得することになり、
自宅に住み続けられるほかに、1000万円の預貯金を相続することができます。
娘は、相続分から配偶者居住権の負担付き所有権を差し引いた残り
1000万円の預貯金を相続することになります。
なお、この説明では、配偶者居住権の評価額を「建物時価の約半分の価値」としましたが、
予想される建物の存続年数や配偶者の年齢などによって違ってきます。
この点は、税理士などに相談したほうが無難です。
また、配偶者居住権は、普通の所有権ではなく、かなり制限されている部分のある権利です。
詳しくは、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。
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「もし制度がないとどうなっていたのか」を考えると
配偶者にとっては自宅に住み続けらえる他に、預貯金も相続することができる
民法の改正は歓迎すべき事柄のようです。
夫が亡くなった後、自宅に住み続けられることは安心につながります。
相続については、財産があまりない家族の方がもめるケースが多いと聞きます。
相続については、やはり専門家に相談することがよいようです。
「夫が亡くなった場合、妻が亡くなった場合に今からできること」について
書籍や週刊誌の記事にもなっています。
後でもめないように、自分ができることを考えてみましょう!
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暮らしの法律Q&A 第105回より (荻谷雅和弁護士回答)
配偶者居住権を取得した場合に相続の内訳はどうなる?
相談
夫が亡くなり、およそ3000万円の自宅と2000万円の預貯金が遺産として残されています。
相続人は私と娘2人です
民法が改正され、配偶者居住権が認められるようになりました。
相続できる内訳はどのようになるのでしょうか。
回答
民法改正により、2020年4月からは、この「配偶者居住権」の制度ができました。
これは、被相続人の配偶者は、被相続人の財産であった建物に相続開始時に居住していた場合において、
次のいずれかの場合には、その居住していた建物を無償で使用できる、という制度です(民法1028条)
1 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき
2 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき
2の場合は、夫が遺言の中で「配偶者居住権を妻に遺贈する」としておく必要があります。
本件は、そうした遺言がなかったものとして説明します。
〇もし制度がないとどうなっていたのか
配偶者と娘が相続人の場合に、相続分の割合は各2分の1です。
遺産は「3000万円の自宅と2000万円の預貯金」ですから合計額は5000万円です。
もし、配偶者が自宅、娘が預貯金という分け方をすると、
配偶者は500万円余分に相続したことになりますから、
バランスをとるためには配偶者から娘へ500万円を支払わなければなりません。
もちろん、預貯金は配偶者にはまったく相続できないことになります。
〇実際の問題として、これではかなりの不都合が発生しかねません。
そこで、創設されたのが、配偶者居住権です。
本件でも、配偶者が遺産分割協議で主張すれば認められる権利です
たとえば、配偶者居住権を建物時価の約半分の価値(=1500万円)と評価すると、
配偶者の自宅に対する遺産分割は1500万円(配偶者居住権分)となり、
娘は配偶者居住権の負担が付いた自宅建物の所有権を取得し、
その価額は(3000万円ー1500万円=)1500万円となります。
法的相続分は、それぞれ2500万円(5000万円×2分の1)になるので、
配偶者は、相続分から配偶者居住権を差し引いた額の預貯金を取得することになり、
自宅に住み続けられるほかに、1000万円の預貯金を相続することができます。
娘は、相続分から配偶者居住権の負担付き所有権を差し引いた残り
1000万円の預貯金を相続することになります。
なお、この説明では、配偶者居住権の評価額を「建物時価の約半分の価値」としましたが、
予想される建物の存続年数や配偶者の年齢などによって違ってきます。
この点は、税理士などに相談したほうが無難です。
また、配偶者居住権は、普通の所有権ではなく、かなり制限されている部分のある権利です。
詳しくは、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。
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「もし制度がないとどうなっていたのか」を考えると
配偶者にとっては自宅に住み続けらえる他に、預貯金も相続することができる
民法の改正は歓迎すべき事柄のようです。
夫が亡くなった後、自宅に住み続けられることは安心につながります。
相続については、財産があまりない家族の方がもめるケースが多いと聞きます。
相続については、やはり専門家に相談することがよいようです。
「夫が亡くなった場合、妻が亡くなった場合に今からできること」について
書籍や週刊誌の記事にもなっています。
後でもめないように、自分ができることを考えてみましょう!
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