戦場でワルツを
2008年/イスラエル=フランス=ドイツ
衝撃のラストシーン
総合 80点
ストーリー 70点
キャスト 70点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 85点
「おくりびと」が受賞して逃したアカデミー賞最優秀外国語賞の本命だった。イスラエルのアリ・フォルマンの実体験をもとに映画化したアニメーション・ドキュメンタリー。
’82レバノンに起きた「サブラ・シャティーラ大虐殺事件」は、レバノンのキリスト教マロン派の指導者パシール・ジャマイエル暗殺の報復のため、パレスチナ難民3000人が無差別に虐殺されている。
原題は「バシールとワルツを」である。「戦場のピアニスト」を連想させる邦題による勘違いか、2人連れの老婦人が30分もしないうち退場してしまったほど、暗い色調のアニメと抑揚のないアリ監督自身のナレーションが眠気を催す。映像はビデオで実写撮影を下書きにアニメ化していて妙にリアル。アニメならではの幻想シーンを織り込んでいてもギャップはなく不自然さは感じさせない。
19歳の歩兵だったアリは何故か事件のあった3日間がぽっかりとアナが空いていて記憶がない。心理学者やジャーナリストに協力を得て、かつての旧友たちと会いながら記憶を取り戻す旅を重ねる。ハイライトは上官フレンケルがワルツを踊るように軽機関銃を乱射するシーン。ショパンのワルツOP.64、NO2をバックにした映像は、とても不謹慎ながらアニメならではのファンタジーである。
そして衝撃のラスト・シーンへ。この数分で単なる個人の記憶を取り戻すためのロード・ムービーを超え、平和へのメッセージを訴えたかったことを強烈に思い知らされた。
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