・ 米国20年代の空気感を切り取ったラブ・ストーリー。
20年代の米国<ローリング・トゥエンティ>を象徴するF・スコット・フィッツジュラルドの小説「グレート・ギャツビー」を3度目の映画化。
「明日に向かって撃て!」(58)でブレイクした遅咲きの2枚目スターロバート・レッドフォードと「ローズマリーの赤ちゃん」(68)でスター入りし、私生活でもセレブのミア・ファローが共演。
脚本は「ゴッド・ファーザー」公開中、パリで執筆中のフランシス・F・コッポラで、監督はジャック・クレイトン。
ひとりの女性を愛することで、あらゆる手段で巨万の富を得た男の哀しく切ないラブストーリー。試写会が女性ファンで溢れ、通路に座って観た40数年前を思い出す。
パンにハエがタカっているシーンから始まる本作は、中西部からNYの証券会社に就職した若者ニック(サム・ウォーターストン)の回想で始まる。
ニックはシカゴの富豪トム・ブキャナン(ブルース・ダーン)とはエール大の級友でその夫人デイジー(M・ファロー)とは従兄妹の間柄。夫婦はロングアイランドの高級住宅街イースト・エッグに住んでいる。
ニックはウェスト・エッグに月額80ドルの借家住まいだが、隣人の大邸宅では毎夜バカ騒ぎのパーティが開かれている。この家の主がギャツビー(R・レッドフォード)という謎の男だった。
豪華な衣装で当時大流行したチャールストンに明け暮れシャンパンを浴びるような男女は29年大恐慌を迎える前の<アメリカの世紀>の空気感が画面から滲み出てくる。
画面に漸く姿を現したギャツビーは昔の恋人デイジーが現れるのを待って豪華なパーティを毎晩開いていたのだ。
ニックの取り持ちで8年ぶりに再会した二人。「金持ちの女は貧乏人の男とは結婚できないのよ」と言ったデイジーに<過去は取り戻せると信じた>ギャツビー。
真夏のロードアイランドに不条理な結末が待っていた。
R・レッドフォードのギャツビーは麻のピンクのスーツがお似合いのハンサム男で狂気じみた成り上がりの男には感じさせない。当初キャスティングされていたジャック・ニコルソンや4度目の映画化で演じたL・デカプリオのほうがイメージ通り。
対するデイジー役のM・ファローは上流社会の身勝手な女を見事に演じていてレッドフォード・ファンを敵に廻すほどの好演。
脇役ではトムの情婦で自動車整備を営むジョージの妻マートルに扮したカレン・ブラックの怪演振りが目を引いた。
このジョージ夫妻を絡ませることでこの作品の高みを一層引き立たせることになる。
夫婦の悲しい定めをメガネの広告看板が冷たい視線で眺め、何事もなかったようなトム夫妻にも襲ってくる大恐慌時代を予言しているようだ。
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