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映画「ヒッチコック」(12・米) 70点

2013-04-13 21:16:31 | (米国) 2010~15
・「サイコ」のメイキングで明かされる、ヒッチコックとアルマの夫婦関係。

  
サスペンス映画の巨匠ヒッチコック。なかでも傑作と言われた「サイコ」(60)の制作秘話と妻・アルマとの関係を描いた99分のドラマ。ともに英国の名優アンソニー・ホプキンスとヘレン・ミレンが初共演というのも驚きのひとつ。原作はスティーヴン・レベロの「ヒッチコック&メイキング・オブ・サイコ」。

ヒッチコックの特異な風貌は映像でかなり知られているので、A・ホプキンスがどの程度似せるかに最大の関心が寄せられたが、ソックリさんではなく2人が融合したという雰囲気。ホプキンス風ヒッチが却って効果的で、このドラマを面白くしている。美食家で大酒飲み・金髪好きは有名だが、彼が演じることで異常な嫉妬深さ・覗き見・死体愛好癖などの倒錯性など、私的欲求がそのまま映画になった理由に説得性が増したともいえる。
妻のアルマは映画ファンならヒッチが79年AFI功労賞を受賞したトキの名スピーチ「<映画編集者、脚本家、娘パットの母、優秀な料理人>であるアルマ・レヴィルに感謝したい。」を知っているひともいるだろう。ただ表舞台には滅多に出なかった人だけにH・ミレン演じるアルマはとても自然な演技で本物感が漂い、主演は彼女では?と思えるほどの見事さ。スカーレット・ヨハンソン演じるジャネット・リーにさり気なく嫉妬したり、真っ赤な水着で泳いだり、脚本家クックによろめいたり、さまざまな女の素顔も見せる。「私が先に監督でヒッチは助監督だった」とプライドを持っていたところも面白い。現に家を抵当に入れ低予算で作り上げた「サイコ」は失敗作だと自信を失ったヒッチを支えたのはアルマで、編集者としての有能さは彼が一番よく知っていた。
競演陣ではS・ヨハンセンやヴェラ・マイルズ役のジェシカ・ビール、秘書のトニ・コレットなど女優陣の好演が目立った。

映画会社パラマウントからは「精神異常者の殺人事件」映画が当たる筈がないと言われ、映倫からは睨まれ苦労して完成した映画が彼の最大のヒット作になった「サイコ」。映画史に残る3分間の「シャワー・シーン」に6日間を費やしたのは、天才の異常さを感じてヒッチがハンニバルに思えてしまった。ちなみに本作は「羊たちの沈黙」のモデルでもあるエド・ゲインをヒントに「サイコ」を企画したシーンで始まる。本作を見れば当然もう一度「サイコ」と「羊たちの沈黙」を見たくなる。


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