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「シャーロック・ホームズの冒険」(70・米) 75点

2015-07-22 16:21:38 | 外国映画 1960~79

 ・ B・ワイルダー構想10年のS・ホームズ大作は、ネッシー登場。

                   

 コナン・ドイルの原作「シャーロック・ホームズ」シリーズは探偵小説の古典で、さまざまな映像化がされている。

 最も原作に近いのはグラナダTVシリーズ「シャーロック・ホームズの冒険」(84~94)であろう。シャーロックを演じたジェレミー・ブレットの頭脳明晰で自信たっぷりな事件解決ぶりは数あるホームズ俳優のなかでもピカイチ。

 同名の本作は巨匠・ビリー・ワイルダーのオリジナルで構想10年というのに日本では劇場公開されず、21世紀になってDVD化され日の目を見た。

 ロンドン・ベーカー街のハドスン夫人所有のアパートに相棒ジョン・ワトスン医師と同居している探偵シャーロック・ホームズ。近頃は興味が湧かない事件ばかりでモルヒネに手をだしワトスンを心配させる。

 そこへ飛び込んできたのは、テムズ川に落ちて記憶を失った美女。ホームズが記憶を呼び戻そうと会話するうち、彼女はベルギー人ガブリエルといい夫の鉱山技師が行方不明ということが判明する。

 夫の失踪、謎のヨナ商会、カナリア、宛名不明の手紙など不可解な出来事と遭遇したシャーロックは、兄マイクロフトが所属する秘密クラブ、ディオゲネス・クラブへ呼び出され詮索は中止するよう勧告される。

 事件のカギはスコットランド・インパネスにあると睨んだシャーロックは、ワトスン、ガブリエル夫人とともにネス湖のあるインパネスへ旅立つ。

 B・ワイルダーは、ホームズの私生活に関わる未発表だった4つのエピソード(本人曰く、四楽章の交響曲)を描いた210分の長編として撮影したが、配給会社・UAから2時間ほどに短縮するよう強い要望があり、やむなく2つのエピソードへ短縮したという。

 そのため序盤のロシア・バレエ団のエピソードは、本編とは関係ないエピソードとして浮いた存在である印象は拭えない。ただワトスンのコミカルな人柄が描かれて、地味で暗い展開になりがちな導入部としては必要だったのかもしれない。
 
 19世紀末のロンドンの街並み、スコットランドの雄大な情景、セットでの重厚感が画面から伝わってくるB・ワイルダーらしい手抜きのない深みのある構成には好感が持てる。

 シャーロックを演じたロバート・スティーヴンスは、監督期待通りの演技を見せたというが、いかんせん地味なキャラクター。ワトスンのコリン・ブレークリーも謎の美女ガブリエル夫人役のジュヌヴィエーヴ・パ-ジュも手堅い演技だが、主役を凌ぐほどではない。

 当初はピーター・オトゥールのホームズ、ピーター・セラーズのワトスンでのキャスティング構想だったというから、大分印象が違ったものになったことだろう。

 存在感を見せたのは、兄マイクロフト役のクリストファー・リー。93歳で亡くなったが、当時ドラキュラ俳優として大活躍中だった頃の出演だけに油が乗り切っていて、原作とはキャラクターが違うマイクロフトを演じている。

 終盤にヴィクトリア女王が登場するなど意外な展開のこのドラマは、シャーロックが弾くヴァイオリンが奏でるもの悲しいメロディで幕が下りる。

 ネッシーとホームズという異色の組み合わせは時空を超えた設定だが、ミクロス・ローザの協奏曲が全編に流れる音楽を聴いていると、ホームズが活躍したであろう時代の雰囲気を充分想像することができた。
 
  
 


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