・ 衝撃だったヒッチの動物パニック映画の名作。
ダフニ・デュ・モーリエの短編をアルフレッド・ヒッチコックが大ヒットした「サイコ」(60)の次回作として映画化を企画。
エヴァン・ハンター(別名「87分署シリーズ」のエド・マクヴェイン)がヒッチのアイデアをもとにシナリオを書いた<突如、鳥の大群に襲われる人々の恐怖を描いたパニック映画>。
サンフランシスコのバード・ショップでツガイを探していた男に興味を持った新聞社令嬢・メラニーが、ラブバード(オカメ・インコ)を手にボデガ・ベイにやってくる途中、一羽のカモメにヒタイを突っつかれたのがキッカケ。
メラニーを演じたのはオーディションから選ばれたティッピ・ヘドレン。ボデガ・ベイに住む弁護士ミッチにはロッド・テーラー。グレース・ケリーとケーリー・グラントのロマンティック・コメディのようなスタートからダンダン雲行きがおかしくなってくる。
ミッチは母(ジェシカ・ダンディ)と年の離れた11歳の妹キャシー(ヴェロニカ・カートライト)の3人暮らし。家族構成もチョッピリ謎めいている。
心の奥に秘めた人間の心情を掘り下げることに長けたヒッチらしく、ドラマは息子に執着する母親像が垣間見えミッチのメラニーへの接近を快く思っていない。あたかも「サイコ」の続編のような屈折した家族愛が伏線となっている。
人間に危害を与えることがないはずのカモメやスズメも大量に現れると恐怖の対象となっている。ましてカラスの大群が子供たちを襲うシーンなど一歩間違えると描きようによっては喜劇になりかねない。
ヒッチは徐々に恐怖感を持たせるために様々なテクニックを用いて何故鳥が人間を襲うのかは謎のままドンドン観客を引き込んで行く。
恐怖感を持たせるために突然大きな音を出すのではなく電子音による音響のみで鳥の鳴く声を再生し、映像も俯瞰のカメラやカットを重ねこだわりのカメラワークがフンダンに出てくる。なんでもCGで処理する今とは違って60年前は誰もやったことがないシーンをどうやって撮影したのか?スピルバーグが見学にきたのを閉め出したエピソードが物語っている。
G・ケリーに去られ失意のヒッチが起用したT・ヘドレンはモデル出身の金髪の美女でこれがデビュー作。お気に入りで次回「マーニー」(64)でも起用したが2作のみで終止符。原因はセクハラで晩年(2016年)ティッピの自伝で告白されている。
美女イジメ?で恐怖感を煽るシーンは電話ボックスに逃げたヒロインがカモメに襲われたり、ミッチの元恋人小学校教師アニー役のスザンヌ・プレシェットが殺されたり事欠かない。
ネガティブな裏話はあるものの、鳥が突然人間を襲うという原因不明の恐怖感はどこか新型コロナを連想させ、エンディングまで煙に巻いたヒッチの才能とともに名画としての輝きは失われていない。
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