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「勇気ある追跡」(69・米) 80点

2013-05-18 19:19:52 | 外国映画 1960~79
 ・H・ハサウェイ J・ウェイン コンビによる、<最後の古き善き西部劇>

 

 チャールズ・ポーティス原作をヘンリー・ハサウェイ監督、主演ジョン・ウェインで映画化。62歳となったJ・ウェインが念願のオスカー獲得作品で、授賞式での涙が印象的だった。コーエン兄弟がリメイクした(「トゥルー・グリット」(10)・当人たちは原作の映画化と主張している)ことで再注目を浴びている。

 1880年代のアーカンソン洲フォード・スミス。馬の買い付けに向かった父親が雇い人トムに殺された、14歳の少女マティ・ロス(キム・ダービー)。凄腕だが大酒飲みの連邦保安官ルースター・コクバーン(J・ウェイン)を雇って、ネッド・ペッパー一味に加わって先住民地区へ逃げたトムを追跡する。途中、若いテキサス・レンジャーのラ・ボーフ(グレン・キャンベル)が加わると、50ドルで雇われたコクバーンは条件の良いラ・ボーフと組もうとする。

 この年「明日に向かって撃て」が製作されアメリカン・ニューシネマの到来として大いに話題となった。古き善き西部劇が衰退を始める時期に、あくまでも保安官が無法者を追って対決するというオーソドックスなストーリーは、ある意味貴重な作品と言ってよい。新鮮だったのは少女が添え者ではなく堂々たるヒロインで、最初から最後まで話の中心であること。演じたK・ダービーは22歳で出産経験もある大人。しかもウーマン・リブの持ち主だと言うから驚きだ。そのせいか髪はショートカットで、気が強く大人顔負けの交渉力もそこかしこで見せる。

 コクバーンは銀行強盗の経験があり、その金で結婚して食堂を経営していたという過去を持つ男。アイパッチをした大酒飲みで妻子と別れ中国人の使用人と暮らす札付き保安官はJ・ウェインならではのキャラクターの持ち主。この2人にラ・ボーフが加わった3人のロード・ムービーがユーモラスで、この西部劇のトーンを明るくしている。ラ・ボーフ役のG・キャンベルは頼りなくて陰が薄いが、主題歌で本領発揮。同じ西部劇でもジョン・フォードの砂漠の色が中心の土臭い感じとは違って、緑豊かな山野の風景がバーンスタインの音楽とともにマッチしていた。

 悪役のリーダー、ネッドに扮したのは若き頃のロバート・デュバル。自分を守るためには部下を犠牲にすることは当然の振る舞いを見せる。あくまで正統派の闘いをしてきたコクバーンとは姿勢が違うことでトムを追跡するのは賞金目当てだが、ネット一味との闘いの必然性が生じてくる。一味のひとり・ムーン役はこの年「イージー・ライダー」で注目を浴びるデニス・ホッパーだが、うっかりすると見逃してしまいそう。

 何といってもJ・ウェインの見せ場は、4人相手にひとりで馬上で手綱を口に咥え拳銃とライフルを手に突撃する決闘シーン。ライフルをクルリと廻すサマは彼ならではの大技で、ファンも納得。

 「トゥルー・グリット」(10)との比較では、渋いジェフ・ブリッジスと大らかでダイナミックなJ・ウェインの違いはあるが甲乙つけがたい。脇を固めるベテラン達は皆J・フォード作品の常連たちで、エンディングも定石どおり。その意味では<最後の古き善き西部劇>と言って良いだろう。
 
 
 
 


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