・ オスカー脚本作品で蘇ったC・アフレック。
ボストン郊外でアパート管理人をしている主人公が、兄の訃報で故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻り、過去と向き合って行くヒューマン・ドラマ。
長編3作目のケネス・ロナーガン監督・脚本によるオリジナルでオスカー脚本賞、主演したケイシー・アフレックが主演男優賞を受賞している。
マンチェスター・バイ・ザ・シーの街並みと海が映り、バックに賛美歌が流れ船に乗る少年と男が釣りをしているプロローグが期待感を持たせる。
ドラマは雪のボストンで働く主人公リーの淡々とした日常が描写され、訃報の電話で故郷へ戻るが釣りのシーンは何時で誰なのかスグには分からない。
現在と過去が交錯する映像は観客に委ねながら進行するので、ぼんやりしていると置いて行かれそう。筆者が風邪で体調不良気味だったせいか。
やがて余命10年だったリーの兄・ジョーが亡くなって、少年は甥のパトリックだと判明、16歳になっていた。さらに元妻が行方不明のため、葬儀を取り仕切るのはリーしかいなかった。
覚悟の死だったジョーは、パトリックの後見人にリーを選んでいたが、リーには忘れることができない忌まわしい過去の悲劇と向き合うことになる。
自分の過失によって3人の子供を失い、妻ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)とも別れるハメに・・・。
「アルビノーニのアダージョ」の曲をバックに幸せだった家族の崩壊を映像で見せることで、リーが何故罪を背負った世捨て人のような暮らしだったかがようやく分かる。
ロナーガンの脚本は、過去の出来事がタイムリーに再現される展開で観客をグイグイ引っ張って行き、目が離せない。
子供を失ったリーと父を失ったパトリックの疑似親子の再生はなるのか?
リーを演じたC・アフレックは「容疑者ホワン・フェニックス」で業界から干されていたが、複雑な感情表現を巧みに演じ、当初演じる予定だったマット・デイモンに恩返し、見事な復活を魅せている。
パトリックに扮したルーカス・ヘッジスは多感な等身大の少年を好演、一躍若手のホープに躍り出た。
所々にユーモアを交えカットバックを重ねたこのドラマの結末は、最初の幸せだったボートのシーンでエピローグとなる。
体調が良い時にじっくり味わいたい<孤独な男同士の再生ドラマ>だ。
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