晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「普通の人々」(80・米)80点

2017-12-05 14:50:59 | (米国) 1980~99 

・ WASPの崩壊を描いたR・レッドフォード監督デビュー作.




シカゴ郊外の閑静な住宅街に住む弁護士一家。半年前にヨット事故で長男を亡くしして以降、夫妻と次男がちぐはぐとなり家庭崩壊して行くWASP(上流中産家庭)を描いたヒューマン・ホームドラマ。
ロバート・レッドフォードが初監督し、オスカー作品・監督賞など4部門を獲得した。

パッヘルベルのカノンがバックに流れる枯葉が舞う美しい街並みの高級住宅街。ジャレット一家の朝食シーンで始まるこのドラマは、3人がそれぞれの苦悩を抱えながら表面化させないようにする気遣いがかえって不協和音が聞こえてくる。

一見平穏な暮らしは、長男の事故死で次男コンラッドが責任を負って精神を病み入院、リストカットしていた。コンラッドを演じたのはティモシー・ハットン。筆者の知っているハットンはデブラ・ウィンガーの元夫でプレイボーイとして有名なことと、TVドラマ「グルメ探偵ネロ・ウルフ」での助手役で記憶がある程度だが、本作の繊細で迫真の演技によって20歳で最年少オスカー(助演男優賞)を獲得している。

父カルビンは、妻と息子の板挟みに悩む優しいが気弱なエリート弁護士。演じたのは個性派脇役として名高いドナルド・サザーランド。ここでは抑えた演技で堂々の主役ぶり。

母べスは、世間体を気にする理想的な家庭の主婦を装うが、溺愛する長男を失い夫・次男に愛想をつかしている。扮したメアリー・タイラー・ムーアは今年1月80歳で亡くなったが、コメディアン・司会者として名を売ったひと。本作では微塵も感じさせない感情欠如したリアルな見栄っ張りの女を哀しく演じている。

レッドフォード監督は3人それぞれの苦悩を微細な心理描写とともに浮かび上がらせ、人間関係の難しさを丁寧に描いて重苦しいテーマながら最後まで引張って行く。俳優としての華やかなイメージを払拭し、とても初監督とは思えない力量を発揮していて、その後の監督としての活躍ぶりが納得させられた。

映画は疑似体験が持論の筆者だが、カルビンように決断することはできそうもない。


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