晴れ、ときどき映画三昧

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「レインメイカー」(97・米) 80点

2014-08-10 17:46:56 | (米国) 1980~99 

 ・ コッポラらしさが窺えないが、オーソドックスな法廷ドラマ。

                    

 ジョン・グリシャム原作「原告側弁護人」を、フランシス・F・コッポラが脚色・監督した医療訴訟法廷ドラマ。若き弁護士・ルディをマット・デイモンが好演している。

 ロースクールを卒業した弁護士志望のルディ。雇い主が見つからず何かと噂のあるブルーザー弁護事務所に拾われる。原題の「レインメーカー」とは、<雨が降るように金を稼ぐ弁護士>の比喩。顧客は自分で探し金をドンドン稼げというボスの方針で、相棒のディックとともに病院での顧客探しが始まる。

 まだ弁護士見習いのレインにとって、とてつもないハナシが舞い込んでくる。それは白血病患者への保険金支払いを認めない大手保険会社グレート・ベネフィット社と法廷で争うこと。

 理想に燃えるルディは単身で審問会に挑むが、判事は無資格であることを理由に認めない。GB社の顧問弁護士ドラモンドは和解金で決着するには格好の相手と読んで、立会人を買って出てルディは弁護士として認められる。

 大会社の顧問弁護士と新米弁護士との法廷での争いは最初から勝敗が見えているにも拘わらず、若き正義感に燃える弁護士の熱意が物事を動かして行くさまが丁寧に描かれている。原作者が弁護士出身なのでとても臨場感がある。

 米国ではオバマ大統領が国民皆保険制度を提唱しているが、議会で難航していてなかなか成立しない。現在の制度は保険会社がHMO(健康維持機構)や特定の医師・病院と契約していて、患者の医療費は加入している保険会社から医師・病院へ支払われる制度が守られている。

 従って難病などへの対応を避けたり、高額医療の治療は受けにくいシステムになり易く、米国が抱える医療事業者と富裕層を優先している実態が背景にある。薬害訴訟とは違い、システムを悪用している保険会社から如何に損害賠償を勝ち取るかという、難度の高い裁判に挑むルディ。

 弁護士資格のない相棒デックや脱税で国外逃亡しているブルーザーのキワドイ援護もあって、保険会社が儲け優先で、治療費を如何に払わないようにしているかを陪審員に印象付けようと大奮闘する。

 サブストーリーとして、夫のDVに耐えるケリー(クレア・デインズ)を救うために事件に巻き込まれ、同情から愛情へ移って行く経緯が随所で描かれる。単純化を避けるためこのラブストーリーが必要なのは分かるが、大事件後中抜きがあって終盤で落ち着くところへ落ち着くのは、却って中途半端な印象が残ってしまった。

 主役のM・デイモンは適役でもっと話題になってもおかしくなかったが、自身が主演しオスカー脚本賞受賞の「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」に話題をさらわれてしまったのは止むを得なかったか?

 敵役の顧問弁護士役を演じたジョン・ヴォイドを始め、相棒のダニー・デヴィート、ブルーザー事務所の代表ミッキー・ローク、保険会者CEO役のロイ・シャイダーなど個性溢れる共演者に囲まれた青年弁護士の成長物語。

 シドニー・ポラック監督、トム・クルーズ主演の「ザ・ファーム/法律事務所」(93)を凌ぐ良作で、コッポラらしくない?オーソドックスな作品だった。

 
 

 


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