晴れ、ときどき映画三昧

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「アメリカン・ハッスル」(13・米) 75点

2014-02-24 11:55:38 | (米国) 2010~15

 ・ ラッセル・ファミリーの演技合戦を楽しむ。

 <ハッスル>には俗語で<詐欺>という意味があるそうだ。70年代後半、アトランティックシティで起きた「アブスキャム(アラブの悪業)事件」をもとにしたエリック・ウォーレン・シンガーの脚本をデヴィッド・O・ラッセルが共同脚本・監督したクライム・コメディ。

 FBI捜査官に協力要請を受けた詐欺師がオトリ捜査を企て、マフィアと癒着したカムデン市長や上院議員たちを逮捕するまでをユーモアたっぷりに描いている。

 詐欺師アーウィンを演じたクリスチャン・ベイルとその愛人シドニーに扮したエイミー・アダムスは「ザ・ファイター」、FBI捜査官リッチーを演じたブラッドリー・クーパーとアーウィンの妻ロザリンに扮したジェニファー・ローレンスは「世界にひとつだけのプレイブック」のラッセル・ファミリー。その4人に「ハート・ロッカー」のジェレミー・レナーとノンクレジットで大物マフィアにデ・ニーロが加わるという豪華キャストによる演技合戦を楽しむエンタテインメント。

 3月2日発表のアカデミー賞最多部門ノミネートを謳い文句にした作品だけに期待充分だったが、ラッセルらしく肩肘張らないコメディが違和感ある人には全然面白くない138分になりそう。

 C・ベイルは天才詐欺師というには余りにも風貌が冴えない中年男で、若い妻に離婚すると大好きな息子を取られるトラウマを抱えている。この役でまたも体型まで変えるカメレオン俳優ぶりがデニーロ・アプローチと呼ばれたデ・ニーロの後継者でもあり、今回も主演男優賞にノミネートされている。デカプリオとのオスカー争いはどちらに軍配が上がるだろう。

 主演女優賞にノミネートされたA・アダムスは、胸元があいたドレスを身につけた偽英国人役で従来の可憐な演技からの脱却を果たし、年齢相応のバンプ役に挑戦して見事な変身ぶり。

 B・クーパーは切れやすいFBI捜査官で、婚約者がいながらシドニーに想いを寄せる狂言回し役を楽しそうに演じ、J・ローレンスは全てをぶち壊しそうな言動でスクリューボール・コメディのヒロインのように搔き廻してともに助演賞にノミネートされた。

 この4人が全てオスカー・ノミネートされ割を喰った感じのJ・レナーだったが、役でも家族想いでマフィアと繋がらないと貧しい市民は救えないという大義名分からのカジノ・レジャーランド建設に奔走した市長役。出演したなかで一番まともで気の毒な気がしたのは筆者だけではないだろう。

 たった1シーンだけでインパクトがあったのは御大デ・ニーロ。お得意のマフィアのボス役でアラビア語で偽アラブの王族に話しかけるシーンは流石。

 ラッセル監督は、人間の持つ弱みをユーモアたっぷりに描写する中にも愛情を込めて終始一貫訴えている。そのあまり不必要と思われるシーンもあって、テンポの悪さを感じるのは宿命的なもの。それを楽しんで観る人が多ければオスカー受賞も現実になってくる。

 70年代後半にタイム・スリップした音楽・ファッションに懐かしい気分にさせてくれた作品でもあった。


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