晴れ、ときどき映画三昧

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「何がジェーンに起ったか?」(62・米)85点

2019-08-06 14:50:40 | 外国映画 1960~79


・ 二大女優の確執そのままに、姉妹の愛憎によるサイコ・サスペンス。


ヘンリー・ファレルの小説をルーカス・ヘラーが脚色、B級アクションの名匠ロバート・アルドリッチ監督が、女同士の情念をモノクロで描いて大ヒットしたサイコ・サスペンス。
プライベートでも確執があったジェーン役のベティ・デイビス、ブランチ役のジョーン・クロフォードの二大女優がバトルを繰り広げ、大いにゴシップ雀を喜ばせた。

ベビー・ジェーンという名で舞台の名子役だった妹のジェーン。長じて美しいスターとして銀幕で大活躍した姉のブランチ。
その絶頂期に車の事故で半身不随となってしまったブランチ。映画関係者のハナシでは、泥酔したジェーンが誤ってブランチを轢いてしまったというもっぱらの噂だった。
いまでは屋敷で同居しながらジェーンが嫌々ながら姉の世話をしていたが、酒に溺れ異常な行動を起こすようになりブランチへの嫌がらせが段々エスカレートしていく・・・。

134分の長さだが、テンポ良く進むストーリーは目が離せない。

天才子役だった意地の悪い妹・ジェーンが長じてスターとなった姉に嫉妬、車いす生活になったブランチをイジメる展開は尋常ではない。観ているうち、ブランチには通いの家政婦・エルヴァインの勧めのように妹を入院させ静かな生活を送ってほしいと思わずにはいられない展開に。

まだ50代半ばだったB・デイヴィスは白塗りの厚化粧で老け役に挑み、過去の栄光にすがる痛々しい姿の怪演ぶりは辺りを圧倒していた。
 B・デイビスより4つ年上のJ・クロフォードは元スターの面影は失わず、自分のコネで役をもらう哀れな妹の面倒をみていた優しい姉に扮し観るひとの同情を買う役柄。

好対照の二人が迎える愛憎劇の結末は、かつてジェーンが父親とリハーサルした浜辺で<意外な真相>が明らかにされる。

最後で、ベイビー・ジェーン人形が不気味な雰囲気のタイトルバックや、幼いころ我儘なジェーンがアイスクリームをねだり羨ましい姉は<死んでも忘れない>と言った冒頭の言葉が蘇る。

荒唐無稽な展開やハナシに若干の破綻がありながら、B・デイビスの圧巻な演技を支えたアーネスト・ホーラーの絶妙なカメラアングルが戦慄のサスペンスを成功させている。

オスカーにノミネートされたB・デイビスを阻止しようとJ・クロフォードが奔走し、授賞式でプレゼンターとして出席した彼女がアン・バンクロフトの名を読み上げB・デイビスに微笑んだというハナシは後世にも伝わる逸話となっている。

 晩年までどんな役にもなりきった女優B・デイビスと、いつまでもスターでいたかったJ・クロフォードは、再起を賭けた本作を境に右と左へ分かれていった。

 女優が主演することが極めて稀なこの時代、全てをなげうって映画に賭けた二代女優による共演作は、映画史を語る上で避けては通れない作品だ。


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