晴れ、ときどき映画三昧

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「欲望のヴァージニア」(12・米) 70点

2015-03-11 08:10:55 | (米国) 2010~15

 ・ 久々のアメリカン・ノワールに浸る。

                

 30年代アメリカ禁酒法時代、ヴァージニア州フランクリン郡で密造酒ビジネスで不死鳥伝説となったボンデュラント3兄弟のクライム・アクション。

 末弟ジャックの孫・マット・ボンデュラントの原作をもとにジョン・ヒルコート監督、ニック・ケイヴ脚本コンビによって映画化されたカンヌ映画祭ノミネート作品。大スター不在ながら充実のキャスティングで、久々アメリカン・ノワールを味わうことができた。

 長男ハワード(ジェイソン・クラーク)は第一次大戦で部隊全滅唯一の生き残り。次男フォレスト(トム・ハーディ)は両親がスペイン風邪で亡くなっても不死身だった。2人とも郷土では伝説の人。

 末弟ジャック(シャイア・ラブーフ)は非力でいつも兄たちの庇護のもとで暮らしていたが、野心は人一倍持っていて、商才にも長けていた。

 物語は3兄弟と密造酒作りを摘発する取締役官の抗争を軸に、ジャックと牧師の娘バーサ(ミア・ワシコウスカ)、フォレストとシカゴから流れてきた女マギー(ジェシカ・チャステイン)との恋物語が描かれる。

 3兄弟ではもっとも頼りないジャックが大人へなっていく成長物語が柱となっているのは、原作者がジャックの孫だったからか?

 人物として魅力的なのはフォレストで、武骨で女性には奥手ながら喧嘩にめっぽう強く何度も瀕死状態に遭いながら、蘇る不死鳥そのもの。

 もっとも何処まで本当かは定かではなく、土地柄でホラや噂話が伝説化したのかもしれないが、ドラマとしてはその方が面白い。

 法を犯している密造酒製造業者が主役で、これを取り締まる法の番人が悪という設定は日本の時代劇やヤクザ映画に良く観られるパターンで、悪代官や2足のわらじを履く親分は悪ければ悪いほどいい。

 本作では、その役割を一手に引き受けたのが連邦警察特別補佐官役のガイ・ピアース。若い頃のピアースは、頭はいいがカタブツで忠実な法の番人役が多いイメージの人。それが、金と女にどん欲でオマケにエリート意識が充満している敵役を、少し悪乗り気味に演じていたのが印象的。

 終盤の橋での銃撃戦は逸話としても残っていて地元には記念館があるほど。3兄弟は国定忠治や清水次郎長にも劣らない地元のヒーローなのだ。

 ミュージック・ビデオ出身のJ・ヒルコート監督と盟友のN・ケイヴは、ロックバンドのリーダーでもあるマルチ・アーティストで、ここでは脚本と音楽を担当している。エンディングに異論がある人も多いが、ただノワール・フィルムの再現では彼の才能が許さなかったのだろう。

 筆者はシカゴのボス役ゲイリー・オールドマン、フォレスト役のT・ハーディの渋い演技が観られただけで満足だ。


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