晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「天国は待ってくれる」(42・米)70点

2020-12-17 15:33:51 | 外国映画 1945以前 


 ・ E・ルビッチ監督、初のカラーでのファンタジー・コメディ。


 レスリー・ブッシュニフェキートによる戯曲「Birthday」をサムソン・ラファエルソンが脚本化、「ニノチカ」(39)のエルンスト・ルビッチ監督、初めてで唯一のカラー作品。オスカー作品・監督・カラー撮影賞にノミネートされたが受賞はならなかった。

 恋多き男が亡くなって地獄の番人に自分の生涯について語り始める。それは愛妻とのラブストーリーでもあった・・・。

 惜しくも本作の4年後に50代で亡くなってしまったが、ビリー・ワイルダーの師匠でもあり小津安二郎も影響を受けたというルビッチ監督ルルビッチ・タッチと呼ばれるその絶妙な語り口とテンポの良さは健在。なにしろ男の一生をエピソードごとにクスリと笑わせ僅か112分で語り終える手腕は唯一無二の存在だ。

 主人公ヘンリー役を20代から70歳まで演じたのはドン・アメチー。「コクーン」(85)での老人アーサー役でお馴染みだが、当たり前だが彼にも若いときがあり、しかもなかなかの美男子!
 NY上流階級ヴァン・クリーヴ家の御曹司で従兄弟の婚約者マーサを奪い駆け落ちして結婚。以来銀婚式を迎えるまでその後も浮気癖は治らずマーサを失っても三つ子の魂は~生涯続いていく。

 マーサを演じたのは当時最高の美女と謳われたジーン・ティアニー。D・アメチーより格上で最初にクレジットされている。青いドレスで画面に現われただけでその美しさは際立っていて目を奪われる。ヘンリーが一目惚れしたのも納得だ。

 二人を取り巻くそれぞれの家族や親戚のキャラクターが立っていたのもこのドラマの面白さ。なかでもヘンリーの祖父役チャールズ・コバーンがコメディ・リリーフ的存在を好演。
 地獄の番人を演じたレアード・クリーガーも印象的な風貌だったが、30歳という若さで亡くなってしまったのが惜しい。

 スタイリッシュで豪華な衣装や家具調度が映えるカラーの本作が太平洋戦争の最中に作られたのが大国のゆとりを表していて、唯一エンディングに戦時国債のクレジットにその面影を残すのみというのも驚きだ。