晴れ、ときどき映画三昧

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「太陽の中の対決」(65・米)75点

2020-12-05 15:02:17 | 外国映画 1960~79


 ・ M・リット監督、P・ニューマン主演の骨太な異色西部劇。


 エルモア・レナードの小説「オンゴレ」を「ハッド」(62)のコンビ、マーティン・リットの製作・監督、P・ニューマン主演で映画化。脚本はアービング・ラヴェッチ、ハリエット・フランク・JRで、アパッチ族に育てられた白人が主人公の異色西部劇。

 19世紀末のオレゴン。幼い頃アパッチに育てられたジョン・ラッセル(P・ニューマン)は「オンブレ」<男の中の男>と呼ばれていた。白人の彼は、養父からの遺産である下宿屋を営む家を売って駅馬車で新天地を目指す。
 同乗者は先住民の監視官フェーバー(フレデリック・マーチ)とその若い妻、下宿屋の女主人ジェシー(ダイアン・シレット)、保安官を辞めたブラデン、同じ下宿住まいの若い夫婦、そして強引に乗り込んできたグライムズ(リチャード・ブーン)という荒くれ者だった・・・。

 原作は村上春樹の翻訳本が出ているが、単なる娯楽アクション西部劇ではない。若い頃の経歴で赤狩りにマークされていたリベラル派のリット監督は、「ハッド」同様西部劇でも複雑な人間ドラマに焦点を当てている。
 本作では米社会が抱える人種問題や豊かな暮らしのためには人間愛を犠牲にする人物像を浮き彫りにした骨太な作品だ。そのため、駅馬車・先住民・強盗など西部劇には欠かせない設定でありながら終盤までスリリングなアクションは極めて少なく、主人公のラッセルも無口で控え目だ。
 
 映画は人間の本性があからさまとなっていく白人社会を、冷静に見極め機敏に行動する主人公の目を通して描いている。

 P・ニューマンは冷静沈着でその眼で感情表現し、その内に秘める勇気や優しさをひた隠しにしながらも究極の選択をしていく格好良さが、西部の男の在り方を具現化して魅せる。

 対極にいるのが先住民を犠牲にし私腹を肥やし若い妻と逃亡しようとした初老の紳士フェーバーで、金の力で全てを謀り最後は妻を犠牲にしても生き残ろうとする仮面の男で最悪の人物像である。
 強盗一味のリーダーである悪党グライムズがまだマシに見えてくるから不思議なものだ。

 気丈な女主人ジェシーとフェーバーの若い妻の人物描写も人は見かけで判断してはいけないという暗示だろうか?

 登場人物ひとりひとりが現代のアメリカにも存在していそうな描写がこの映画の面白さ。21世紀になってもアメリカ社会はそんなに変わっていないのでは!?