晴れ、ときどき映画三昧

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「新・ガンヒルの決斗」(71・米)70点

2020-08-15 12:58:48 | 外国映画 1960~79


 ・ H・ハサウェイ監督による最後の異色西部劇。


 30年代からあらゆるジャンルを手掛けた娯楽映画の職人監督ヘンリー・ハサウェイ最後の西部劇。ウィリアム・ジェームズの原作「ローン・カウボーイ」を脚色した本作の原題は「Shoot Out」。主演は「大いなる西部」(58)のグレゴリー・ペッグ。

 J・スタージェス監督の「ガンヒルの決斗」(58)とは無関係で、銀行強盗の刑期を終え出所したクレイ(G・ペッグ)が裏切った元相棒サム(ジェームズ・グレゴリー)への復讐のため向かった場所がガンヒルだったためこの邦題がついた。

 もうじき7才になる少女デッキー(ドーン・リーン)を連れてのロード・ムービーはむしろハサウェイ監督の「勇気ある追跡」(69)のテイストで、スタッフが同じなのも頷ける。

 本国アメリカの西部劇は70年代を迎えニューシネマ時代となって行く。その狭間で昔ながらの正義が悪を倒す西部劇とはひと味違う西部劇が作られたが本作もそのひとつ。

 G・ペックは西部劇出演も多いが、何と言っても「アラバマ物語」(62)を代表するアメリカの良心を具現化するインテリジェンス溢れる人物のイメージがある俳優。
 その彼が元銀行強盗で馴染みの女がアチコチにいる役柄は不似合いで、どうしてもいい人に見えてしまう。

 元恋人から現金と一緒に届けられた少女がもうじき7才というのは、実の娘かが極めて微妙な設定。足手まといになるのを承知でガンヒルへの旅は、まるで筆者がお気に入りの「ペーパームーン」風ロードムービーの趣。
 川で身体を洗い焚き火で暖めたり、ホットケーキを焼いたりするシーンは親子のキャンプのよう。一方野生のポニーを捕らえるが母馬に返したり、牧場のポニーを盗んでも母馬がいないから良いというデッキーがいじらしい。結局持ち主から15ドルで買うなど流石G・ペックのイメージは壊さない筋書きだ。
 デッキーを演じた天才子役D・リーンは達者な演技で準主役的存在だ。

 雨宿りで寄った未亡人ジュリアナ(パット・クイン)宅では復讐はどうでも良さそうな展開だったが、サムが雇った殺し屋ボビー(ロバート・F・ライオンズ)の3人組が邪魔に入る。
 ウィリアム・テルのマネをして子供の頭にリンゴを乗せ拳銃で撃つという悪趣味でハラハラさせるが、未亡人が自分の息子ではなくデッキーを選んだというところを見せる意図なので仕方なかったのかも・・・。

 サムはクレイとの決着はお金で解決しようとするが、ボビーのような悪党を雇ったことが間違いだった・・・。

 終盤の展開に甘さが目立ったのは残念だが、熟年を迎えたG・ペックの西部劇は暑い夏の昼下がりを充分楽しむことができた。