晴れ、ときどき映画三昧

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「三人の名付親」(48・米)80点

2020-04-02 12:53:19 | 外国映画 1946~59


・J・フォード、J・ウェインコンビによるクリスマス西部劇。

 <初期西部劇の空に輝く星、ハリー・ケリーに捧ぐ>というクレジットで始まる西部劇。ジョンフォードの盟友ハリー・ケリー主演「恵みの光」(19)のリメイクで主演はジョン・ウェイン、ケリーの息子H・ケリー・Jrのデビュー作。

 アリゾナで銀行強盗に失敗した三人の無法者がメキシコへ逃亡中、途中の水場で幌馬車を発見する。出産間近だった婦人から生まれた赤ん坊を託され名付親となった三人は、聖書に導かれ赤ん坊を世話しながら砂漠を逃避行する・・・。

 130本以上の作品を手掛け、西部劇でも駅馬車(39)怒りの葡萄(40)荒野の決闘(46)など数多くの名作を生んできたJ・フォード監督。本作は前年亡くなった無声映画の名優H・ケリーを偲んでリメイクしている。
 駅馬車のシーンとともにお馴染みのテーマ曲が流れ、アリゾナの荒涼とした砂漠の映像美など<詩情豊かな映像の詩人>ぶりは健在だ。
 J・ウェインはこの年フォード監督「アパッチ砦」、ハワード・ホークス監督「赤い河」で主演、翌年「黄色いリボン」に出演するなど絶頂期。
 正義のガンマンが多い役柄が定番のデュークにとって珍しく銀行強盗役だが、殺人は一切ないどころか乳飲み子を抱え砂漠を放浪するというサバイバルぶりが見どころの心優しい大男。やはり悪役は似合わない。

 幌馬車で生まれた赤ん坊を聖書に導かれニュー・エレサレムへ向かう三人は、東方の三博士を暗示する。メキシコの名優ペドロ・アルメンダスと賛美歌で美声を披露するH・ケリーJrがそれぞれの持ち味を発揮して力尽きる姿が切ない。
 三人を追うスイート保安官のウォード・ボンド、貯水タンクの管理人フローリー夫人に扮したジェーン・グーウェルなどベテラン俳優のほか、ベン・ジョンソン、フランシス・フォード、ハンク・ウォーデンなどフォード一家が揃う本作。
 リチャード・ヘイグマンのピアノとともにロバにすがって酒場に現れたデュークを温かく迎える。
 「刑は受けるが、母親との約束は破れない」という台詞とともにハッピー・エンドとなるファンタジーは、何時観ても家族揃って楽しめる西部劇だ。ただし傍にミネラル・ウォーターを置いておくことをお勧めする。