晴れ、ときどき映画三昧

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「洗骨」(18・日)70点

2019-12-04 12:31:11 | 2016~(平成28~)

・ 沖縄の離島に残る因習から家族と自分を見つめるヒューマン・ドラマ。


 沖縄出身のガレッジセール・ゴリこと照屋年之の脚本・監督による長編二作目。「洗骨」という古い風習が残る沖縄の離島・粟国島を舞台に、離れかけていた家族としての心情を取り戻していく様子をときにはユーモラスにそして厳粛に描いている。
 妻を亡くした夫に奥田瑛二、長男・剛に筒井道隆、長女・優子に水崎綾女が扮している。

 葬儀をテーマにした邦画は、伊丹十三監督作品「お葬式」やオスカー外国語映画賞受賞作品「おみおくり」があるが、本作はそれをミックスした作品だろうか?

 日本では火葬が全てという認識があったが、この島では風葬があって4年後死者の骨を荒い個人への感謝を表すという「洗骨」の儀式が残っているという。

 プロローグは亡くなった女性の棺を真俯瞰で捉えた厳粛なシーン。女性は信綱(奥田瑛二)の妻・恵美子(筒井真理子)だった。東京の大企業に勤める剛一家と名古屋で美容師として働く優子(水崎綾女)が帰郷していた。悲しみに暮れるなかユーモラスなオチでカットとなる。

 そして4年後信綱は酒に溺れ引き籠もり状態、剛は一人で帰郷、優子は大きなお腹で戻ってきた・・・。

 沖縄ならではの青い海と空、三線の音が流れるなか大らかな人情溢れる村の暮らしで繰り広げられる、離ればなれになった家族再生をユーモアを随所に交えながら描いていく。

 お笑いタレントの監督らしく暗くなりがちなシーンにも必ず笑いを取ろうとする姿勢はときには行き過ぎ感はあるものの、「洗骨」という因習を丁寧に描くことでバランスの良いドラマに仕上がっている。

 自制心を失い酒に溺れる父を演じた奥田が受けの演技で好演し、その姉に扮した大島蓉子が仕切り役として本作をリードしていてまるで地元民のよう。

 中盤登場した美容院店長役の鈴木Q太郎が、如何にもコメディリリーフ的な笑いで違和感があったが、知らない土地の文化に触れた戸惑いを観客目線で補完する役割りを担ったものだろう。

 情けない男たちと逞しい女たちが登場する本作だが、監督はスクー網魚のシーンで男たちに救いの手を差し伸べる。意地悪だった地元民も終盤でフォローするなど思いやりも欠かさない。

 ナレーションで洗骨のコンセプトを伝えるなど至れり尽くせりなのが気になったが、エンディングに流れる「童神」がこの作品のオリジナル曲にように余韻を醸し出す良作だった。