晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「グリーン・ブック」(18・米)80点

2019-10-22 16:20:18 | 2016~(平成28~)


 ・王道のハリウッド路線を踏襲したヒューマンなバディ・ムービー。


 60年代アメリカ南部を舞台に、NYマフィア御用達「コパカバーナ」の用心棒と黒人ピアニストの二人が旅する2ヶ月間で、徐々にお互いの理解を深めて行く姿を描いたヒューマンドラマ。実話に基づいたストーリーを主人公の息子ニック・バロレンガと監督のピーター・ファレリーおよびブライアン・カリーの共同脚本により映画化。オスカー作品・脚本賞とピアニストに扮したマハーシャラ・アリが2度目の助演男優賞を受賞した。

 「ロード・オブ・ザ・リング」3部作でその名を知られたヴィゴ・モーテンセンは「ヒストリー・オブ・ザ・バイオレンス」(05)「イースタン・プロミス」(07)などバイオレンス俳優のイメージが強く、今回の主人公には不向きでは?と思っていたが見事に変貌して魅せてくれた。

 M・アリも知的で繊細な天才ピアニスト役で「ムーンライト」の麻薬の売人役とは正反対の役柄をこなし監督の期待に応えている。

 そもそも監督自身も「メリーに首ったけ」などコメディ路線を歩んできた人。まさに観客の先入観を覆した三人による映画だ。

 昨今の映画は時空をシャッフルして観客を誘うシナリオが多い中、場違いな二人が何故旅に出たのかを順を追って描いた分かりやすい筋立てで、回想シーンがなくても二人の生い立ちや過去が触れられているつくりも好感が持てる。

 オスカー受賞は白人目線の作品<白人救世主>との評価もあって、スパイク・リーを始めハリウッド批判の声も高い。

 それでもこの時代、有色人種の一般公共施設の利用禁止<ジム・クロウ法>によって、黒人のための「グリーン・ブック」なるものが存在したことすら知らない筆者をはじめとする世界の人々には充分胸に迫るものがある。

 ギャグで笑わせながら、人間の尊厳や友情を育んだロード・ムービーは心温まるエンディングを迎える。

 筆者にとって自覚意識のない差別を改めて自戒するような映画だった。