・ F・ビュボスク監督・主演の爽やかな大人のラブコメ。
人気コメディアン、フランク・デュボスクが初監督で脚本・主演もこなした大人のロマ・コメ。
恋を遊びとしか考えない中年プレイボーイが、ふとした偶然で車椅子生活のふりをしたことから本当の恋におちていくハナシを、ユーモアたっぷりに描いたラブ・ストーリー。
健常者が障害のふりをするというのは、一歩間違えるととても後味の悪いだけでなく尊厳を傷つけるものになりかねない。ましてそれをネタに女性と付き合うというキワドイ物語をデュボスクは実に爽やかに描いて見せた。
フランスでは有名なコメディアンというが筆者は初見でどういう芸風かしらなかったが、本作の主人公のような<女好きで虚言癖がある気取り屋に扮して笑いを取る一人芝居のコメディアン>とのこと。
まさに日頃の芸風をそのまま映画化したような本作だが、相手のヒロインが車椅子生活者の美女であることがユニークなところ。
妹・ジュリーの勘違いから紹介された姉・フロランスでバイオリニストでテニスも得意なアスリート。演じたアレクサンドラ・ラミーがとてもポジティヴで内面から滲み出る優雅さが主人公ジョスランをいつしか虜にしてしまう。
ジョスランは大手シューズの代理店経営者で裕福なうえバブル期にはよくいた一見いい男で女性を魅了する条件は揃っている。結婚恐怖症はどうやら両親の離婚が原因か?遊びなら引く手あまたなのに本当の恋には疎く、親友の医師マックス(ジェラール・ダルモン)や秘書マリー(エルザ・ジルベルスタイン)を巻き込んで大騒動。ジョスランに片想いのマリーに扮したE・ジルベルスタインがコメディ・リリーフとして好い味を出していた。
おまけに認知症の父(クロード・ブラッスール)のルルドへ行けと言われる始末。
ふたりのデート・シーンがプラハの夜景やキャンドルが点るディナーなど女性のハートを奪うロマンチックなシーンがあり、水中のラブシーンなど見どころも随所にちりばめられている。
ジョスランの嘘がいつバレ、二人の恋の行方は?という本筋は定番ながら、<私のことを女性としてみてくれた>というフロランスの言葉が、差別・偏見という壁を乗り越えた爽やかなラブストーリーとなった。