晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「ドント・ウォーリー」(18・米)70点

2019-10-10 12:28:36 | 2016~(平成28~)


 ・ 風刺漫画家J・キャラハンの自伝をガス・ヴァン・サントで映画化。


 名優ロビン・ウィリアムズが14年自死したため念願叶わなかったが、ガス・ヴァン・サントの脚本・監督、主演ホアキン・フェニックスで映画化が実現した。

 オレゴン州ポートランドで、胸から下が麻痺の車椅子生活を送るジョン・キャラハン。アーティストとしての才能が開花し、生きる原動力となっていく。アルコール依存症からどのように立ち直っていくのか?その回復プロセスを追っていく。

 キャラハンを演じたのが今最もホットな「ジョーカー」の主演俳優、ホアキン・フェニックス。「誘う女」(95)以来2度目の監督作品の出演となった。
代表作だった「ザ・マスター」(11)でも個性的な演技で注目を浴びたが、彼自身主人公同様アル中や自動車事故スキャンダルを経験していて、役柄にのめり込む姿勢は相当なもの。今回、自伝やインタビュー録画などを反芻し、車椅子の使い方や筆裁きなど細部にわたって演じて本人そっくりとの評判だ。

 キャラハンが講演会で語るシーンで始まる本作は、半身不随になった日のこと、ヘルパーに八つ当たりして酒に溺れる日々、実母への想いに号泣、禁酒会セラピーへの参加、漫画の才能に目覚め美大に通い街行く人へ作品を見せるなど、地元新聞に掲載され脚光を浴びるまで数々のエピソードをシャッフルしながらの構成だが、ストーリーが混乱することはない。

 監督は過度な悲壮感溢れる愛と感動の物語にせず<自暴自棄になって人生最悪と思っている主人公が、周りの人や環境で立ち直れるのだ>というプロセスを丁寧に描こうとした。

 そのため、キャラハンの個性であるタブーを恐れない皮肉で辛らつな風刺漫画のような強烈な生きざまは幾分抑制され、スピリチュアルな方向が垣間見える。

 禁酒会セラピーのシーンがかなり比重が高く、主催者ドニー(ジョナ・ヒル)の言葉で老子や神が出てきて「身勝手な信念より神を」「弱さを自覚したものほど強い」「失いたくない大切なものは失っていく」など教訓的な言葉も多い。

 ガールフレンド・アヌー役のルーニー・マーラも公私混同のような・・・。

 無理を承知でロビンのキャラハン役を観てみたかった。