晴れ、ときどき映画三昧

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「ザ・シークレットマン」(17・米 )70点

2018-09-02 15:10:39 | 2016~(平成28~)

・「ウォーターゲート事件」を内部告発した男の実像に迫るサスペンス。




ワシントン・ポストがスクープし、ニクソン大統領が任期途中で失脚したウォーターゲート事件。記者たちへ極秘情報を提供したのは通称・ディープ・スロートと呼ばれた。
事件捜査を指揮したFBI副長官マーク・フェルトを主人公にしたサスペンス・ドラマ。

「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(17)と同時公開された飯田橋・ギンレイホールで鑑賞。

05、ディープ・スロートの正体を明らかにしたマーク・フェルト ジョン・オコーナーの原書をもとに、報道記者だったピーター・ランデズマンが脚本化し、「バークランド ケネディ暗殺真実の4日間」(13)「コンカッション」(15)に続く監督3作目作品。製作にはリドリー・スコットなどとともにトム・ハンクスの名がある。

主演のM・フェルトには「シンドラーのリスト」(93)、「96時間」(08)のリーアム・ニーソン。最近では中年サスペンス・アクション俳優として知られているが、筆者には「シンドラーのリスト」の印象が強い演技派。最近では「沈黙 サイレンス」での諦観した元神父役で出演していた。
髪を白く染め緊張感あふれる風貌は別人のようで、揺れ動く心情を抑制の効いたポーカーフェイスで好演している。

ウォーターゲート事件で思い起こす映画は「大統領の陰謀」(76)でワシントン・ポストの若い記者バーンスタイン(D・ホフマン)とウッドワード(R・レッドフォード)の奮闘記。

新聞というメディアに憧れ就職した若者がいたのを記憶しているが、ディープ・スロートの実像は明らかにされずモヤモヤ感は拭えなかった。

本作はその実態が明らかにされ、M・フェルト本人だったことが判明。
尊敬していたフーバー長官を失い自分が後任になることを密かに願っていたにもかかわらず、ニクソン子飼いの司法次官グレイが就任。FBIの独立制を失うとともに窓際族への恐怖心からの行動とも取れる。

もっとドラマチックな展開もあったと思うが、ランデズマンは元ジャーナリストらしく長年取材を重ね、事実に寄り添いながら高潔で謙虚なM・フェルトの人物描写にエネルギーを費やした。

重要人物の私生活スキャンダルを掴むなど、目的を果たすためには手段を択ばないフーバー長官の影の存在のまま<FBIの鏡>と称され退官したが、妻子を顧みず犠牲となった仕事一筋の葛藤と苦悩も描かれていた。
公明正大な正義の人ではないが、組織を守る有能な官僚であり、高級官僚としての正しい在り方を示したことは、紛れもない事実だ。

偶然とはいえトランプ政権誕生とともに「ロシア疑惑」を捜査したFBIコミー長官が解任された。事実が過去のドラマを超えるような出来事で本作の興味が薄まってしまったのは確かだ。

歴史は繰り返し、現代のディープ・スロートは存在するのだろうか?