・ イヤミスの女王小説を映像化した白石和彌監督による男女の愛憎劇。
湊かなえと並ぶイヤミスの女王・沼田かほかる原作の同名小説を「凶悪」「日本で一番悪いやつら」の白石和彌監督で映画化。主演した蒼井優が日本アカデミー賞主演女優賞を受賞した。
15歳年上の男・陣治と同棲している十和子。不潔で下劣な陣治を毛嫌いしながら彼の稼ぎで自堕落な生活をしていた。
ある日デパート店の時計売り場の主任に、かつての恋人黒崎との想いがオーバーラップしてくる・・・。
清純派のイメージが抜けきらない蒼井優が自分勝手で自堕落な女性役に挑んだ。関西弁でデパートへクレームの電話をするさまは本当にこんな女がいるなと想わせる。
家事一切をせず家は散らかり放題、金銭的な繋がりだけで男と同居し、8年前に別れた恋人を未だに引き摺っている。
十和子を巡る男たちが3人登場する。
阿部サダヲ扮する陣治は、建築現場の作業員で十和子に<不潔・下品・下劣・貧相・卑劣>と罵られながら十和子のためなら何でもするという。食事のシーンで品格が窺えるように生理的に女性が受け付けないタイプ。
十和子が忘れられない黒崎を演じているのが竹ノ内豊。くどき上手で派手好きなイケメンの自営経営者だが利害だけで動くクズ男。
デパートの主任水島に扮したのは松坂桃李。朝ドラの清々しい2枚目から悪役まで幅広い役に挑み活躍中だが、今回は妻子持ちの好色な不倫男の役。
3人とも女性から見て結婚相手に相応しくないダメ男たちだが、現実には理想的な王子様は存在しないという恋愛指南的な作品ともいえる。
見かけで騙されてはいけないという警告でもあり、DV男やストーカーの区分けはなかなか難しい。
ねじれた男女の愛憎劇はミステリー要素を孕みながら、終盤<究極の愛>で幕を閉じる。
蒼井優の体当たり的演技が賞に結びついたが、筆者には蒼井優は蒼井優にしか見えなかった。
むしろ汚れ役の阿部が役得で本編をさらってしまった。二人のイケメンは女性ファンが減るの覚悟で演じたことに拍手を送りたい。