・ 正義感溢れるヒーローを演じたR・レッドフォードの野球映画。
バーナード・マラマッド原作「奇跡のルーキー」をもとに、米国における30年代のプロ野球界を舞台に不遇を乗り越え35歳でメジャー・デビューした男の半生を描いたファンタジー。
野球で天性の才能を発揮したロイ・ホップスがスカウトの目に留まりプロ入りを決意、シカゴへ来たとき不運にも謎の女性に銃で撃たれ道を閉ざされる。
16年後、35歳のルーキーとしてNYに現れた彼は、賭けが横行しているなか<愛と正義を遺憾なく発揮する>という大人の寓話。
原作は悲劇だったが、映画ではハッピーエンドに脚色。野球奨学生だったロバート・レッドフォードが47歳にして念願の野球映画に主演している。
アメリカにとってメジャー・リーグは日本の相撲のような存在。人気スポーツにつきものの賭けの対象になっていてスキャンダルも多く、20年代から世間を賑わしていたのは八百長問題。映画でも後にK・コスナーの「フィールド・オブ・ドリームス」にも取り上げられたシューレス・ジョー・ジャクソンのブラック・ソックス事件が有名。
本作でもベーブ・ルースがモデルの飛ばし屋(ジョー・ドン・ベイカー)との賭け対決があったり、なんと球団オーナーがギャンブラーと結託して自分のチームの負けに賭けるという奇想天外なもの。
弱小チーム・NYナイツの4番バッターとして彗星のごとく現れたホップス。オーナーの愛人メモ(K・ベイシンガー)の誘惑によるスランプを乗り越え、ホームランを連発する。
ボールが裂けたり、ネットを突き破ったりするのを観て、マーシー記者(ロバート・デュヴァル)はシカゴで会ったホップスを思い出す。
ホップスは大切なワールドシリーズ進出を決める試合に古傷が疼き、選手生命を絶たれるのを覚悟で愛称・ワンダー・ボーイのバットでバッターボックスに立つ・・・。
それは幼馴染だったアイリス(グレン・クローズ)のためでもあった。
ストーリーは奇想天外だが、R・レッドフォードを巡ってスポーツ選手連続殺人鬼の女性(バーバラ・ハーシー)・オーナーの愛人メモ(K・ベイシンガー)・幼馴染アイリス(G・クローズ)が彩を添え、名手キャレヴ・デシャネルの詩情豊かでノスタルジックな映像とともにこの時代感覚を醸し出している。
照明灯が花火のようになるなど、ケレンミたっぷりのレビンソン演出にはいささか荒唐無稽さはあるものの、ホップスが息子とキャッチボールするエピローグは<不遇だった父親が挫折から立ち直るための応援歌>でもあった。